第19話
そんな状態が何年も続いていた。私は常に疲弊しており、客観的に考えたら、別れるべきだと当時の私も分かっていた。だが、彼から離れることが出来なかった。私はいつも彼の顔色を窺い、彼から嫌われないように必死だった。
私たちの転機は、ふとしたことからだった。その日、私は友人の結婚式に出席していた。とても素敵な式で、幸せいっぱいの友人を見た私は、迎えに来た彼に上機嫌で式の様子を話した。彼はみるみる機嫌が悪くなり、私が結婚を強請っているように見えたようだった。
その瞬間、私の彼への執着は無くなった。彼といたら、友人のような幸せは一生手に入らないことに漸く気付いたからだ。ずっと一人になることが恐ろしかった。だが、二人でいても寂しいのだから、一人でいても変わらないと思えた。
それから、彼の機嫌を取ろうとしなくなった私に、彼は最初は苛立っていたが、だんだん私の顔色を窺うようになった。そして、別れを告げた私に彼は「別れたくない」「結婚しよう」と縋った。あれほど私と結婚したくないと言った彼の言葉に、私の心は冷え切っていた。
別れるまで相当時間が掛かったが、漸く彼が家を出た後、寂しさもありながら清々しい気分だった。そこから数年は同じ保育園に勤めていたが、積もり積もったものがあったようで体調を崩しがちになり退職した。
彼が住んでいる街にいるのは嫌だった。遠く離れた街に引っ越し、昔からの夢―――自分の家族を作ることを叶えようと心に決めたのだ。
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