第27話



「私、今まで元彼から連絡が来ると動揺してしまっていて。」



 それは決して元に戻りたいという意味では無くて、当時の自分を責めてしまう苦しさからだ。そう説明する私の顔を佐藤さんは気遣うように見つめていた。



「だけど、今回は違ったんです。」



 決意を表明するように言葉に力を込めた。私は佐藤さんへ上手く笑えているだろうか。



「落ち着いて対応できて、気持ちが乱されることも無くて……。」



「うん。」



「佐藤さんのことばかり考えていました。」



 佐藤さんの身体がピクリと動き、目を見開いた。




「梨奈ちゃん、それって……。」



 私は恥ずかしさを誤魔化すように、へにゃりと笑った。




「佐藤さん、好きです。大好きです。」



 私が言い終わった瞬間、温かい身体に包み込まれる。佐藤さんの香水の香りがふわりと感じられ、鼓動が早くなる。



「佐藤さん……?」



「暫くこのままでいさせて……。」




 縋るような声を拒否する筈がない。私は抱き締められたまま、幸せを噛み締めていた。




「佐藤さん。」



「ん?」



「……尚也さんって呼んでもいいですか?」




 温かい身体が離れ、私の顔を覗き込む。その時の心底嬉しそうな笑顔が、私の目に焼き付いて離れない。




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