カット分
【カット分】一方その頃…
※浮雲の彼方の章01での2人の話し合い内容です。
読まなくても特に問題ありません。オマケです。
オーンはアナンタに連れられて屋敷の中へと戻った。
すると、彼女は大きなため息をついて、机に着いた。
その対面に彼が座ると、彼女はぶちぶちと文句を言い始めた。
「あのね。私はあなたのためを思ってやってるのだけど。舐められたくないのでしょう?それなら、搾り取れる分だけ搾り取るべきよ」
「いや、そこまでやる必要はないだろ」
「あなたは甘いのよ」
「……そうかもしれないけどさ。A級っていうのはアレだろ?C級B級ときてA級なんだろ?実力者じゃないのかよ」
「言っていることが本当なら、そうなんでしょうね」
「ここで嘘つく意味あるか?そもそも、そういうのって騙ったら罰とかがあるんじゃないの?」
「そこまでは知らないけど……」
「じゃあいいだろ。いざとなったら俺が拘束して放り出す。何も問題はない」
彼は屋敷から彼らの侵入を大気の哨戒によって悟り、窓の陰に身を隠しつつこれを大気の手で拘束し、その生殺与奪を握った後に彼らの前に登場したのだ。
しかし、彼らがあまりに違う違うと青い顔で首を振るものだから、集団のリーダーと思われる男をまず解放し、理由を聞いた後にそのメンバーも解放した、という経緯があった。
そのため、とっさに大気の手を使い、再び彼らを拘束するのは、どうということはない。
しかしそれでも彼女は食い下がった。
「でも、本当にA級なら、あの行商人が買い求められないものを頼むことも出来るのよ?」
「それなら、ワロンに頼めばいいだろ。そしたらあいつが金の力でA級でもなんでも雇って、回収してくれるさ。そうだろ?」
「それは、そうだけど……」
「何がそんなに気に入らないんだ?」
オーンは彼女の態度に、言外の不満を感じてその顔をのぞき込んだ。
すると彼女はその視線から逃れるように目を逸らし、もごもごと呟く。
「あいつらから手を出してきたんだから。相応の罰が必要よ」
「別にそれに反対はしてないさ。だから、ビビらせたし、その結果、謝罪もさせた。もういいだろって」
しかし、もうよくない様子の彼女はぷくっと頬を膨らませた。
私、不満です!と言いたそうな頬に、彼は肩を落とした。
「あのさぁ。ちょっと真面目過ぎるんじゃないか?アナンタは」
「だから、オーンが甘いの!私は普通なの!」
「あー、はいはい。だけど、一応俺が家主だから、家主の決定には従ってもらいます」
「むー!」
もはや、彼女は言葉で説明することすらせず、ただ不満を表現するばかりだった。
意見の相違は行き過ぎると関係の断裂を引き起こすが、この二人の場合はそうはならない。
まず、アナンタが子供っぽくなり、それに気付いたオーンがハイハイと宥めて終わりだ。
それで怒りが長引くようならオーンがご機嫌伺いに向かい、上手く行こうと行くまいと最終的にはアナンタが矛を収めて仲直りする、ということになる。
「それじゃ、俺はあいつら呼びに行くからアナンタは待っててな」
そのため、あまりその状態に対して心配していない彼が席を立ち彼らを迎えに行くと、彼女はぷひゅると頬の空気を抜いて、俯いた。
「心配してるのよ。私は……」
ぽつりとつぶやいた彼女の独り言は、しんと静まり返った屋敷に消えていった。
***
シビアなアナンタvs楽観的なオーンの図
けんかというよりじゃれ合いに近いのかも。
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