【番外編】ファンタジー金属研究
※時系列としてはルアラルイーネの章中です。
※オーンのソロです。手伝いでちょっとだけアナンタも出ます。
入荷した金属は全部ファンタジーだった。
銅とか鉄とかが無くて、青みがかった銀色のミスリル、ショッキングピンクに近い色のオリハルコン、明るいオレンジ色のアダマンタイトまではまぁ俺も聞いたことはあった。
だが、透き通るような黒のダークスティールと、真っ赤な表面にキラキラを散りばめたようなフレムベリアは初めて見たぜ。
特にこのフレムベリアってのは謎が多い。
インゴットになってるから、加工済みのはずなんだが、ゲームのループするタイプのアニメーションでよくある、十字の光の表現が表面にキラキラと浮き出てるんだ。
そのキラキラを触ろうとしたら透過した。どうなってんだこれ。
何はともあれ、まずはこの金属の魔素がどんなものかってところの検証からだな。
で、そのためにすることは、どんな魔素があり得るかっていうイメージから。
イメージは大事だ。何に使えるかという見当をつけるためにな。
ミスリルのイメージは魔銀って感じだ。
聖なる力が宿っている。あるいは、魔力を通す効率が良くて、魔法と相性がいいイメージが強いな。
だから、あるとしたら、聖属性とか、調和とか、増幅とかそんな感じかな?
オリハルコンは神の鉱石って感じだ。
アダマンタイトほどではないがめっちゃ硬いっていうのと、伝説級の武器の素材になっているイメージが強い。
だから、神性とか、硬質とか、伝承とか、そんな感じかな?
アダマンタイトはもう完全防御って感じだ。
これより硬いものはない。っていうのと、すげー重い。っていうのと、あとは加工がめちゃ大変、ってイメージが強い。
だから、超硬とか、鈍重とか、不変とか、そんな感じかな?
ダークスティールは……なんだ。闇の鋼…?
見た感じ真っ黒だから、闇属性か?そんぐらいしか分からん。
闇って言うと、デバフとか、状態異常の盲目とかかなぁ。
フレムベリアもう何か分からん。
炎っぽさはあるが、それだけだ。
というわけで検証開始だ。
まずは、アダマンタイトをどうにかして刃物にしようと思う。
こいつが一番硬いってんなら、こいつなら全部に対しての加工に使えるだろう、という話からだ。いや、極論、刃物じゃなくてもいいな。
ノミとハンマーにするか。
金属を魔素で扱うのは初めてだから、まずは重ねてどうこうできるものなのかを検証。
浮動はかなり抵抗を感じる、というか、単純に密度が高いからか?動かせるっちゃ動かせるが、これなら普通に手で持って移動させた方が断然楽だ。
逆に堅実はあっさり入った。多分元々適性があるんだろうな。土の仲間みたいなもんだし。
ただ、元々硬いものをさらに硬くしてどうするんだって話なので、意味無しではある。
相性があるとは判明したか。
で、実際に魔素が重なることは確認したので、そろそろ本番だ。
元々、候補は決めてあった。
一つは水の魔素に含まれる、流動の魔素だ。
文字通り、液体に存在する魔素で、水のように流れるように移動させることが出来るが……普段は浮動で十分なので全く使っていなかった。
これを金属に使って、例えば水銀みたいにならねーかな。という話だ。
一つは火の魔素に含まれる炎熱の魔素。
炎とあるが、熱だけだと収まりが悪いので付けただけなので、本質は熱だ。
ただ、これ扱いがちょっと難しくて、上がり方と下がり方に慣性みたいなものがあって、制御が特段に難しい。ので、これは鍛冶場みたいな環境がないと試せない。
これは順当に熱で溶かして加工しよう。という話だ。
一つはアナンタが扱う風の魔法に含まれる鋭利の魔素。
先日聞いた話を思い出してピンと来たんだが、刃物に元々含まれるだろう魔素をインゴットに足したら、どういう反応があるんだろう、と思ったので
ただ、これはアナンタの協力が必要だ。
でも、彼女が使う魔法は全部規模がでかいから、1回で十分な量が集まるだろう。
これは希望的観測だが、鋭利の魔素を足したら勝手に刃物の形にならねーかな。という話だ。
というわけで流動の魔素から試したが。
「うーん。これは、なんか違うな」
重ねて動かしてみると、粘りがとても強い。
流れないわけではない。無いが、加工しようと思うと相当な時間がかかる。
それはもう、1日2日じゃない。数か月かかりそうな手応えだ。
やっぱり、固体を流動させようとしたのが間違いだったな。
と思ったが、何故かダークスティールとは相性がいい様で、他の金属と比べると断然滑らかに加工できた。
ただ、この方法で加工すると、硬さが戻らない。
うっかり1本使ってしまって、これが丸ごとぷよぷよする謎の物体Xになってしまった。
もったいねぇ。
なんか、ハリのある物体で、指をさすと、指先を中心に凹み、放すとゆっくりと戻る感じ。
指で切断しようとしても、切断は出来ない。薄皮一枚のところで繋がっている感じ。
で、手に持とうとしても持てない感じだ。つるりと隙間から滑って落ちてしまう。
……使い道が分からんから、置いとくしかないな。
さて、気を取り直して次に行こう。
次は炎熱の魔素だが。
ここで初めてシェルターを使おうと思う。
要は実験場にしてもいいわけだ。
だが、床が抜けるのは怖いので、最下層でやろうと決めた。
まずはミスリルから。
だったが、熱しても何も変わらんかった。ナニコレ。温度も一切変化無しだ。
何か、特殊な工程が必要なのかもしれん。魔銀っていうぐらいだし。
ということでしょっぱなからパス。
次はオリハルコン。
これは白熱した。したが、そこから先は輝き初めて、眩しくて見ていられなくなり断念。
アダマンタイトをインゴットの状態で叩きつけてみたが、全然柔らかくなってなかった。
これもミスリルと同様、何か必要説。ということでパス。
アダマンタイトも無理かなぁ。
と思ってたら、これは普通に溶けた。なんやねん。
でも溶けたものを入れるものが無かったので中断した。
とりあえず、これは熱でいける、と。
謎の物体Xはこれ以上どうなるか分かったもんじゃないのでパス。
フレムベリアは気持ち、表面のキラキラの速さが上がった気がする程度でそれ以外は無反応だった。ミスリルと同じか。パス。
結果、アダマンタイトだけが熱で加工できるという結果に。
いや、ファンタジー金属難しいなぁ。
で、最後の鋭利の魔素だが。
「アナンタさんオナシャス」
「はいはい」
アナンタにトルネードを使ってもらう。
竜巻から魔素を集めたら、竜巻が霧散して、凶悪な大気の刃が一つ出来上がったが、これを濃縮したら、空間が断裂してるみたいになってめっちゃかっこよくなった。
で、アナンタが俺の後ろに隠れた。
彼女にはこれがものすごくヤバくて恐いものに見えるらしい。
まぁ、確かにヤバくて恐いことに違いはないが。
炎熱と比べると全然制御は出来ているのでこのままこれをインゴットへと移す。
のだが。
フツーに量が多いので、少しずつ千切って使うことにした。
まずミスリルから。
行けたは行けた。行けたけど、インゴットが切れた。
違う、そうじゃない。
でも、鋭角に切断して研げばいいので、まぁいっかとなった。
まさか重ねるだけで現象が起きてしまうこともあるとは、うっかりだぜ。
というわけで、他の金属も同様にして刃物の原型を作ったわけだが。
アダマンタイトは逆にダメだった。傷一つつかない。
んで、興味本位で物体Xに使ったが、これもダメだった。
物体Xマジ物体X。
フレムベリアも反応なし、と。
これどうやったら加工できんだ。
で、砥石が無いので『鋭利』で加工できた金属に『鋭利』でざらざらの面を作って、これを砥石代わりにすることにした。
それで、砥石に一番適性があったのはオリハルコンだった。
神の鉱石とは一体……。
そういうわけで、ミスリルの刃物とオリハルコンの刃物が出来た。
アダマンタイトは、土を金床の形にしてこれにうっすいミスリルを乗せて、即席金床を作り、同様にハンマーにもミスリルをくっつけて
が、暑さと硬さが尋常じゃないので、溶けないレベルで柔らかくして、平らにした大気の手で成型。どうにか鋭角の物体は出来たが……、刃物、うーん。刃物モドキだな。
そんなわけで、土の持ち手でミスリルナイフ、オリハルコンナイフ、アダマンタイトナイフもどきが出来上がった。
本命のアダマンタイトがモドキなので、ミスリルかオリハルコンだな。使えるのは。
ちなみにオリハルコン砥石ではアダマンタイトは削れなかった。無駄に硬い。
で……。何をするんだっけ?
気が付いたらアナンタもいないし。
また没頭して無視したかもしれない。後で謝りに行こう。
……あ、そうそう。目下、金属にしたいのは、コンロ周りと包丁だ。鍋とフライパンはとりあえず注文したやつがあるから保留で。
で、包丁はミスリルとオリハルコンのナイフが出来たからどっちかを使うとして。
そうなるとコンロ周りを何にするか、だが。
ミスリルだな。
加熱しても熱されないから、これが一番安全だ。
ただ、量が少ないから、極薄にカットしてコーティングする形になりそうだ。
ワロンに追加注文しとかないとな。
それと、砥石で磨いた感触から、ミスリルとオリハルコンだとオリハルコンの方が硬そうだったので、オリハルコンはまな板をコーティングするのに使うことにした。
一方で、グリルやらオーブンやらを作る場合は、熱に反応する金属でなければならないので……、いや、これはファンタジー金属でやるより、鍋とかに使われてる金属をインゴットで仕入れた方が早いかもしれない。
そういうことになった。
***
ミスリル → ナイフ・コンロ周り・(金床・ハンマー(アダマン加工用)
オリハルコン → ナイフ・まな板・砥石
アダマンタイト → ナイフもどき
ダークスティール → 物体X
フレムベリア → 加工できず
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