【カット分】一方その頃…③

※ユーリの章02にて、オーンがルアラの説得をするシーンです。

 主にルアラの話になるのでカットしてこちらに上げました。

 


「ルアラ、悪いな。今日は二人で食べよう」


 アナンタの下に2人分の朝飯を運んだ俺は、食堂に戻り、アライさんに言う。

 でもまぁ。


「なんで?」


 そう来るよなぁ。


「あー、昨日、変な時間にスープを作ってもらっただろ?」

「ん」


 その時は説明が面倒だったから、アナンタが腹減ったことにしてたんだが。


「あれはアナンタが腹を減らしたわけじゃなくてな?」

「ちがうの?なんで?」

「いや、ちょっと複雑な事情でな……」


 俺はそこから、昨日起きた出来事をかいつまんでアライさんに話した。

 すると。


「なんでうそついたの?」


 そう来たか。まぁ、そうだよな。

 それには考えておいた言い訳を返す。

 10割真実ではないが、間違ったことは言ってないしいいだろ。


「……すまん。その時は俺もかなり混乱してて、説明するのが難しかったんだ。一晩寝たらだいぶマシになったから、今説明した。悪かったな」

「……ん、分かった」


 ちょっと疑いの目を向けられたが何とかなったな。

 次からは余計なこと考えないで正直に話そう。

 無駄にヒヤヒヤしたぜ。


「冷める前に食べようぜ」

「そうだね。まだ聞きたいことはあるけど」


 おっと、どうやらまだアライさんの尋問は続くようだ。


 と思っていたが。




「私もおせわしたい」

「いやー……それは難しいんじゃないかな」

「なんで?」

「……どう説明すればいいんだろうな」


 オーンは私にお世話させたくないみたい。

 なんでなんだろう?

 だけど。


「アライさんは魔族だからな」

「……」


 説明はそれだけだった。

 魔族だと何がいけないの?と思ったけれど。

 奴隷だった頃を思い出して。


「その子は私がきらいなの?」

「……あー、そういうことじゃないんだが、最終的にそうなるかもしれない」

「そう、なんだ」


 ちょっと、ううん、けっこう、落ち込んだ。


「きっと、うん、きっと慣れてくれば、受け入れてもらえると思うが、まだ早いってことだ。実は俺もけっこう嫌われてるんだ」

「オーンが?なんで?」


 それはとってもフシギだった。けれど。


「背が高いからな。その子はアナンタよりも小っちゃいんだ。俺なんて巨人に見えるんだろうさ。俺なんて同じ人間なのにそれだぜ?」

「そっか」


 オーンも落ち込んでるはずなのに、オーンは笑いながらそう言った。

 変なの。


「そうなんだ。だから、一緒にちょっとずつ、慣れてもらおうな」

「うん!」


 そっか、いっしょに、なんだ。

 それなら、フシギだけど、いい気がした。



 だけど。


 夕食をオーンと食べた後、部屋に戻る途中で、アナンタとその子が見えて。

 振り返ったその子と目が合ったから、手を振った。


 だけだったのに。


 彼女は私を恐がって、走り出して、こけてしまって。

 私が駆け寄ろうとしたら。


 肩を押さえられて。


 振り返ったらオーンがいて、首を振っていて。


 私はオーンに抱き着いて、少し泣いて、だけど。

 きっと、あの子の方が泣きたかったんだろうって思ったから。

 

 私はオーンの言う通り、あの子にはしばらく近づかないことに決めた。


 そのことをオーンに言ったら。


「偉いぞ。相手の気持ちが分かるのは、とても大事なことだからな」


 そう言って、頭を撫でてくれて。


「それに、ご飯を作ってあげてるんだから、あの子も余裕ができたらそのことに気付くはずさ。大丈夫。ゆっくりやろうぜ」

「ん」


 そう言ってくれたから。

 その時まで、私は待つことにした。

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