ナレーション練習帳(合冊)

Danzig

第1話 りんご



リンゴ


日本人にとって非常に馴染みのある果物といえば、リンゴという人も多いのではないでしょうか


そのまま食べるだけではなく

焼きリンゴや、アップルパイなどのお菓子とか、

ポテトサラダにリンゴを入れる事も多いですね。

風邪を引いたときに、リンゴを摩(す)り下ろした「リンゴジュース」を飲んだ経験のある方も、いらっしゃると思います。


そんな日本人に馴染みの深いリンゴですが、西洋では日本以上に、生活に根付いた食べ物なのです。



リンゴの原産地については、諸説ありますが、

ヨーロッパに伝わったリンゴは、西アジアの「コーカサス地方」が発祥とされています。


歴史的には、コーカサス地方の隣(となり)にあるトルコで、八千年前の住居跡から、炭化(たんか)したリンゴが発見されています。

この発見は、この頃既に、リンゴが栽培(さいばい)されていた事を物語っており、

この為、リンゴは、人類最初の栽培果樹(さいばい かじゅ)とも言われています。


それを裏付けるかのように、ヨーロッパの歴史の中には、リンゴを栽培した記録が多く残っています。


三千三百年前には、エジプトのナイル川で、大規模な果樹園(かじゅえん)が作られていたという記録もありますし、

ギリシャ時代には、既に接ぎ木(つぎき)などの、栽培(さいばい)技術も生み出されていたと言われています。

そして、ローマ時代には、なんと、リンゴの品種カタログが発行されていました。



こんなにも歴史のあるリンゴですが、

では、なぜリンゴがこれほど、ヨーロッパ全土で人々に受け入れられたのでしょうか?



それは、他の果実(かじつ)と比べて、丈夫(じょうぶ)で、日持ちがする上に、果汁が多く、ビタミンも豊富で、栄養価も高かったからなのです。

まさに、リンゴは、良いことづくめだったのですね。


そして、リンゴの果汁は、シードルというお酒にもなり、水があまり綺麗でないヨーロッパの地域では、大変重宝(ちょうほう)されたと考えられています。


それだけではありません。

15世紀に始まった大航海時代には、船乗りたちのビタミン不足を補う為の、欠かせない食べ物でした。


それほど、ヨーロッパの人々とリンゴは密接な関係があるのです。

そして、それは、リンゴがヨーロッパの古い物語に沢山登場する事でも分かります。


旧約聖書に出てくる、アダムとイブが食(しょく)したと言われる「禁断の果実」は、リンゴですし

白雪姫が食べたのもリンゴ、

ウィリアムテルが射抜(いぬ)いたのもリンゴでした。


このように、古い物語の中に沢山登場するリンゴですが

この頃のリンゴは、今のリンゴよりも、ずっと小さく、直径が5センチ程度、

親指と人差し指で、丸を作ったくらいの大きさでした。

こういった小さいリンゴの事を「クラブアップル」といいます。


男性の喉(のど)にある「喉仏(のどぼとけ)」は、アダムがリンゴを喉に詰まらせたからだと言われていますが、これも、当時のリンゴが小さかった事を考えると、納得できますね。


また、ウィリアム・テルが射抜いた、子供の頭の上に乗せられたリンゴが、クラブアップルだったと想像すると、

その場の緊張感と、射抜いた時の驚きがどれ程のものであったのか、なんだか分かる気がします。


リンゴが今の大きさになったのは、16世紀ごろのイギリスです。

ですから、16世紀より前に書かれた物語に登場するリンゴは、全てクラブアップルなのです。


リンゴが小さかった事を想像しながら、もう一度お話を読むと、これまでとは少し違った印象になるかもしれませんね。



みなさん、いかがでしたか。

私達の生活に馴染みのあるリンゴですが、意外と知らない事も多かったと思います。

ますます、愛着が湧いたという方もいるかもしれませんね。


では、ここで、美味しいリンゴの見分け方をお教えしましょう


リンゴは、同じ種類であれば、大きくて重いものがよいとされています。

また、お尻の部分まで、赤く色づいたものを選ぶといいでしょう、

そして、裏返した時に、お尻の部分が広いものの方が美味しいです。


鮮度に関してですが

リンゴは鮮度が悪くなると、果肉が柔らかくなります。

指でコンコンとはじいてみて、カンカンと高い音がするものが、鮮度がよく、身がしまって食感も香りも良いのです。

逆に、ポコポコと柔らかく低い音がするものは、鮮度が悪くなってしまっており、食感も「もさもさ」した感じで、あまり美味しくありません。


スーパーでリンゴを買う時には気にしてみてくださいね。


それでは、またお会い致しましょう。

さようなら

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