第18話 梅雨
梅雨(つゆ)
6月に入り、春の花も散って、木々の葉の色も濃くなってくると、いよいよ汗ばむ夏がやって来ます。
でも、その夏よりも、少し前にやってくるのが雨の季節。
そう梅雨(つゆ)です。
梅雨は、世界的に見ても、日本を含めた東アジアの限られた地域にしか見られない、特有の季節なのです。
これは、太平洋から夏を連れて来る南の高気圧が、冷たく湿ったオホーツク海の北の高気圧を押し退けようと、ぶつかる事で起きる現象で、この二つの高気圧がぶつかる場所が、気圧の谷間となり、雨がふる梅雨前線(ばいうぜんせん)となるのです。
この時期の北の高気圧は手ごわく、南の高気圧が必死に押し退けようとしても、なかなかどいてはくれません。
ですから、梅雨前線も停滞(ていたい)してしまい、その地域に長雨を降らせるというのが、梅雨の正体なのです。
さて、梅雨の正体は分かりましたが
では、なぜ梅雨(つゆ)は、梅雨(ばいう)、「梅の雨」と書くのかをご存じですか?
梅の花が咲くのは、早いものでは1月の下旬頃、遅いものでも5月の上旬頃で、梅雨の季節にはもう梅の花はありません。
それを不思議に思った方もいるのではないでしょうか?
実はこの「梅雨(ばいう)」という言葉は、中国で作られました。
この時期は湿気が多く、カビが発生しやすい時期です。
ですから、最初はこの雨に「カビの雨」と書いて、黴雨(ばいう)という名が付けられました。
中国語では「メイユー」と発音します。
しかし、カビの雨では、いかにもジメジメして気分がどんよりしてしまうという事で、
同じ「メイ」と発音する梅の字があてられ、「梅の雨」梅雨(メイユー)になったと言われています。
また、梅の実が熟(じゅく)す時期だから、梅の字があてられた説もあるようです。
ちなみに、梅の木は、梅雨が発生する東アジアにしか生息しない植物なのだそうですよ。
何とも不思議な一致ですね。
そして、この言葉が日本に伝わり「梅雨(ばいう)」と読まれるようになり、
江戸時代の頃から、いつしか「つゆ」と言われるようになったようです。
ですが、なぜ梅雨(ばいう)の事を「つゆ」と呼ぶようになったかについては、諸説あり、ハッキリした事は分かっていないようです。
でも、この時期の長雨の名前に工夫をして、何とか気分を変えようとしていたようですね。
さて、話は少し変わりますが、
皆さんは、梅雨(つゆ)にも「陰性」と「陽性」の二つの性格がある事をご存じですか?
陽性の梅雨とは、スコールのように短い時間に激しく降ったかと思うと、すぐにカラッと晴れてしまう。
そんな雨が繰り返し起こり、気温も上がりやすいタイプの、まるで、ラテン系のような梅雨です。
一方、陰性の梅雨とは、しとしとと、止(や)まない雨がいつまでも降り続き、気温も上がりにくいタイプの、
まるで、歌や小説に出てくるような情緒(じょうちょ)的な梅雨。
梅雨には、この二つのタイプがあるのです。
これは、梅雨前線の位置に関係していて、
前線の南側、いわゆる太平洋高気圧に位置する地域では陽性になり、
逆に北側のオホーツク海高気圧に位置する地域では、陰性になると言われています。
主に、西日本では陽性に、東日本や北日本では陰性になりやすく、
また、梅雨入りの時期は陰性で、梅雨前線が次第に北に押し上げられて行くに連れて陽性に変わる事が多いようですね。
さて、皆さんは、どちらの梅雨が好きですか?
・・・と言っても、どちらの梅雨も湿気が多くて、気分が滅入(めい)るという人も多いのではないでしょうか?
確かに雨を降らせる低気圧は、特に女性にとっては頭痛や体調不良の原因にもなりますし、
ジメジメした湿気は食べのもを早くダメにしてしまい、気分も何だかどんよりしてしまいますね。
では、ここで少し気分を変える為に、この時期ならではの「おまじない」を一つご紹介しましょう。
そのおまじないとは、
この時期に美しく咲く「紫陽花(あじさい)」を使った「紫陽花守り(あじさいまもり)」という「おまじない」です。
日本は古来より、梅雨の時期は疫病(えきびょう)が流行(はや)りやすいと言われており、
「紫陽花守り(あじさいまもり)」は、その邪気を払う為のまじないとされて来ました。
作り方は、紫陽花の茎(くき)を長めに切り、葉を落として和紙や半紙などで包みます。
この時に、願い事を書いた紙を巻き付けたり、包む紙の裏側に願い事などを書いて忍ばせるそうです。
それを、水引(みずひき)や麻紐(あさひも)で結び、玄関や軒(のき)などに逆さにつるします。
つるす場所によってご利益(りやく)が変わるそうで、
例えば
玄関や軒下につるすと、魔除けや、厄除け。
トイレにつるすと、女性特有の病気に掛からないとか、
自室につるすと、金運がアップする、などなど諸説あるようですね。
つるす時期は、6月の6の付く日、つまり、6月の6日、16日、26日、それか土用の丑の日が良いとされます。
つるす期間は一年間で、次の年の6の付く日までと言われています。
6月は、みずみずしいままの紫陽花を、土用の丑の日などは、少し乾いた紫陽花を使うようですが、
紫陽花によっては、ドライフラワーになりにくく、シワシワになってしまうものもあるから注意が必要なのだとか・・・
また、昔は紫陽花だけを包んでいたようですが、最近では紫陽花だけではなく、ブーケのように他のドライフラワーなどを一緒に包む事もあるようですよ。
今年は、あなたならではの「紫陽花守り(あじさいまもり)」を楽しんでみるのもいいかもしれませんね。
いかがでしたか
梅雨の季節は、とかく気分も滅入りがちですが、
美味しいものを食べるとか、屋内スポーツで汗をかくとか、傘やレインコートでオシャレを楽しむとか、
気分を変えて乗り切りたいですね。
それでは、またお会い致しましょう。
さようなら
ナレーション練習帳(合冊) Danzig @Danzig999
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