第9話 おでん
おでん
みなさん、「おでん」は好きですか?
寒い季節になると、温かいものが恋しくなりますね。
中でも「おでん」は冬の定番料理
コンビニなどで「おでん」を売り始めると、なんだか「冬が来た」という気分になりませんか?
ですが、この「おでん」
その原型は、室町時代以前からあるようなのですが、
今のスタイルになったのは、江戸時代の終わり頃という、意外と新しいもののようなんです。
「おでん」は、もともと、豆腐を串に刺して、味噌を付けて焼いた「田楽(でんがく)」と呼ばれる料理でした。
今でも「田楽」という料理はありますので、ご存じの方もいるかと思います。
では、なぜこの「田楽」が「おでん」になったのか・・・
実は、この「田楽」を「おでん」と呼び始めたのは、宮中(きゅうちゅう)の女性達なのです。
宮中とは、天皇の住んでいる、宮殿とか屋敷の事なのですが、
昔から、宮中の女性達は、物の頭に「お」を付けて、上品な呼び名にする習慣がありました。
例えば、みそ汁の事を「おみおつけ」、冷たい水の事を「お冷(ひや)」、
にぎり飯(めし)の事を「おにぎり」、頭(あたま)の事を「おつむ」などなど
これらは全て、女房詞(にょうぼうことば)と呼ばれる、宮中の女性達が使う言葉から生まれたものです。
そして「田楽」も「お」を付けて「お田楽(おでんがく)」と呼ばれるようになり、
「お田楽」の「楽(がく)」が省略されて「おでん」になったと言われています。
「おでん」は、江戸時代になると、屋台で売られる人気メニューの一つとなりました。
具材も、豆腐以外に、里イモやコンニャク、魚などと、種類も増えていきましたが、
調理の形式としては、まだ、串を刺して味噌を付けて焼くという「焼き田楽」のスタイルのままでした。
そのころ、関西地方では、具材を昆布だしで温め、味噌を付けて食べるという「煮込み田楽」のスタイルが登場しました。
これが暫くして、江戸にも伝わり、この「煮込み田楽」も、江戸で人気となりました。
そして、この二つを区別する為に、焼くスタイルのものを、これまで通り「田楽」と呼び、
煮込むものを「おでん」と呼ぶようになったのです。
江戸時代の終わり頃になると、今の千葉県にある、銚子(ちょうし)など、江戸の近郊で、安いお醤油が作られるようになりました。
それまでのお醤油は、関西地方のものが主流で、江戸では高級品でしたが、
この安いお醤油が出回るようになると、カツオ出汁(だし)に、醤油や砂糖、みりんなどを入れた、
濃くて甘めの汁で具材を煮るスタイルの「おでん」が作られるようになりました。
そして、これが、今度は関西に伝わります。
しかし、関西では既に、昆布ダシで煮て、味噌を付けて食べるスタイルの「おでん」がありましたから、
それと区別をする為に、醤油の入った出汁で煮る「おでん」の事を、
「関東煮(かんとに)」とか、「関東炊き(かんとだき)」と呼ぶようになったのです。
でも、江戸風の味付けは、関西人にとっては醤油の味が濃すぎた為に、醤油の味を薄くして、出汁の味を利かせた、
関西風の味付けの「関東煮」が生まれ、関西で人気となります。
そして今度は、この関西風の「関東煮」が、大正時代の関東大震災を切っ掛けに、関東に伝わり、
これが人気となって、関東に今の「おでん」として定着したのです。
「おでん」は、西と東を行ったり来たりしながら、今のスタイルになっていったのですね。
そして、この「おでん」が、その後、全国各地に伝えられ、
地域によって、さまざまな「ご当地おでん」が生まれていきました。
個性的なものとしては、静岡の真っ黒な出汁の「おでん」とか、
名古屋の、味噌で煮る「おでん」、金沢のカニが入った、豪華な「おでん」などがありますが、
それ以外にも、個性的な「おでん」が沢山ありますね。
みなさんの地域では、どんなスタイルの「おでん」なのでしょうか。
おでんの具材は、全国で、なんと200種類以上もあるそうです。
定番は、やはり、大根、卵、コンニャク、さつま揚げ、などでしょうか、
また、変わり種としては、トマト、ロールキャベツ、レタスや、シュウマイ、なんてのもあるようですね。
まだまだ、これからも、新しい具材が、どんどん生まれそうですね。
まさに「おでん」は、どんな具材でも美味しくしてしまう、魔法の料理なのかもしれませんね。
いかがでしたか
「おでん」は、ご飯にも、お酒にも合いますが、みなさんは、どんな風に「おでん」を楽しむのでしょうか?
それでは、またお会い致しましょう。
さようなら
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