第7話 スパイス



スパイス


みなさん、スパイスはお好きですか?

料理に欠かせないスパイスの一つに、コショウがありますね。


「スパイスの王様」とも言われる、このコショウ。

私達は、ラーメンや、料理の味付けに気軽に使っていますが、数百年前の世界では、

そんな事は、とても出来ない、大変貴重な品だったようです。


コショウの記録は、古いもので、約2500年前のギリシャまで遡(さかのぼ)ります。

その頃のギリシャでは、インド産のコショウが、薬として用(もち)いられたようですね、


コショウが日本に最初に伝わったのは1300年前の奈良時代。

ここでもインド産のコショウが薬として用いられたようです。


ギリシャと日本、時代も場所も違うのに、どうして、コショウは、同じ「薬」として用いられたのでしょうか

それは、コショウには、消化や、血流、代謝(たいしゃ)を促進(そくしん)させる作用があるからなのです。

中国の古い薬の本にも、コショウは薬として書かれています。


ローマ時代になると、コショウは食材として使われるようになりますが、お金として使う事が出来る程、大変貴重な食材でした。


では、なぜ、コショウは、それ程、貴重な食材だったのでしょうか?


それは、ヨーロッパでは、地質的にコショウを育てる事が出来なかったからなのです。

ですから、遥(はる)か遠くの、インドから、二年以上かけて運ばなければなりませんでした。

当時の交易(こうえき)は、殆どが陸路(りくろ)でしたから、大量に運ぶ事ができません。

しかも、幾つかの国を経由する為、その都度、商人が値段を釣り上げたと言われています。


そして、このコショウの希少性(きしょうせい)は、数百年後の中世ヨーロッパの時代まで続きます。

その頃のヨーロッパでも、コショウは、金(きん)と同じ価値と言われるほど、高価なものでした。


しかし、長い間、ヨーロッパで大変高価なコショウでしたが、1498年、このコショウの価値に革命が起きます。


ポルトガルの「バスコ・ダ・ガマ」が、船でインドまで辿り着き、大量のコショウを持ち帰る事に成功したのです。

このインド航路(こうろ)の発見により、ポルトガルは一大帝国を築く事となり、

ヨーロッパ諸国は後に、コショウを求めて海へ乗り出し、大航海時代へと突入していく事となるのです。



ところで、みなさんはコショウといえば、どんな物を想像しますか?

黒くて丸い小さな粒とか、灰色がかった色のビンに入った粉とかでしょうか?

みなさんがコショウと聞いて想像するのは、多分、コショウ科(か)、コショウ属(ぞく)に属する植物の実。

いわゆる、ブラックペッパーとかホワイトペッパーの事だと思います。


しかし、世界にはコショウと呼ばれる、別の食材があるのです。

それは何だと思いますか?


みなさんは「ゆずこしょう」という食材をご存じでしょうか?

「ゆずこしょう」は、九州地方発祥の辛い調味料。

一時期、全国的にブームとなった事もあるので、ご存じの方もいるかと思います。


でも、この「ゆずこしょう」

名前に「コショウ」とついていても、コショウは使われていないのです。

この「ゆずこしょう」に使われているのは、コショウではなく、唐辛子。


そう、唐辛子もコショウと呼ばれる食材なのです。


もともと胡椒(こしょう)とは、中国で「異国の香辛料」という意味合いの、辛い食材全般を指していました。

ですから、日本でも唐辛子をコショウと呼ぶ地域があるのです。

ちなみに、唐辛子は、南蛮渡来(なんばんとらい)の食材という事で、地域によっては「なんばん」とも呼ばれています。

食材の名前って、なんとも不思議ですね。


ですが、不思議な事は、これだけではありません。

実は、唐辛子をコショウと呼ぶのは、日本だけではないのです。


英語で、レッドペッパーとか、ホットペッパーといえば、唐辛子の事。

つまり、西洋でも唐辛子の事をコショウと呼ぶのです。


これは、コショウを求めてインド航路を探していたコロンブスが、

インドではなく、アメリカ大陸に辿り着いてしまった事が原因なのです。

アメリカ大陸を、インドだと勘違いしたコロンブスが、アメリカ大陸にあった、唐辛子をヨーロッパに持ち帰り、

「これはコショウだ」と言い張ったからだと言われています。


理由は違えど、唐辛子を日本と同じようにコショウと呼ぶのは、何とも不思議ですね。


いかがでしたか

みなさんも、今夜は歴史に想いを馳(は)せて、スパイスたっぷりの、カレーなんて如何(いかが)でしょうか?


それでは、またお会い致しましょう。

さようなら

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