第15話 雨


そう、空から落ちて来るあの「雨」です。

誰でも知っている、この「雨」ですが、


では、みなさんは、どうして雨が降るのかをご存じでしょうか?


水蒸気が空の上で冷やされて、水や氷になったのが雲で、

その雲の中の水や氷が、次第に大きくなって、雨や雪になって落ちて来る。

そういうふうに学校で習った方も多いと思います。


勿論(もちろん)、それが正解です。

ですが、それ以上に不思議に思った事はありませんか?


例えば、

水蒸気がどうやって出来るのか、とか

雲はどうして空に浮いていられるのか、とか

どうして普通の雲は白いのに、雨が降る前の雲は黒いのか

とか、とか。


今回は、そんな不思議を踏まえながら、雨の一生について、お伝え出来ればと思っております。



雨の元は水蒸気です。

いわば、雨の赤ちゃんですね。


では、水蒸気ってどこにあるのでしょうか?


私達は、水蒸気が、「蒸発した水」という事は知っていますし、

ヤカンのお湯が沸騰した時に、水蒸気が出来る事も分かります。


ですが、雲を作って雨を降らせる程の水蒸気がどこで出来るのでしょう。


きっと、多くの方は「海」だと思われていると思います。

勿論、海は正解なのですが、

でも、海って、水蒸気の元となる水は沢山あるのですが、

水が沢山あり過ぎて、水の温度は、ヤカンのお湯と比べると、かなり冷たいですよね?


そう不思議に思われた方もいるかもしれません。


実は、水はヤカンのお湯のように、100度で沸騰しなくても、常に蒸発をしているのです。

洗濯ものが乾いたり、濡れていた道がいつの間にか乾いたりするのは、水が蒸発して、水蒸気となっているからなのです。

驚く事に、氷からも水蒸気が出ているのです。

冷凍庫の中に霜(しも)が出来るのは、氷から出た水蒸気が、再び冷凍庫の中で冷やされて、氷となるからなのです。

ですから、冬の寒い時期でも、水蒸気は発生し、雲は出来るのです。


こうして考えると、水蒸気が出来る場所は特に「海」に限らないという事がお分かり頂けると思います。


そして、実は、海よりも陸地の方が、雲が出来やすいといえるのです。。

確かに、海の方が水蒸気の出来る量は多いのですが、海は雲を作る為のもう一つの大切な条件が、陸地と比べると随分と少ないのです。

その大切な条件とは「上昇気流」です。

雲が出来る為には、水蒸気を上空へと運ぶ上昇気流が必要なのです。

その上昇気流は、海よりも陸地の方が発生しやすい為に、海よりも陸地の方が雲が出来やすいといえるのです。


地上付近で出来た水蒸気が、上昇気流に乗って、上空に到達すると、

水蒸気は冷やされて、水や氷の粒になります。

この水や氷の粒が雲の正体です。


ですから、私達の洗濯物についていた水や、植木や花壇にかけてあげた水なども、雲の一部になっているのです。

そう考えると、ちょっと雲を身近に感じませんか?



ところで、

水蒸気が水や氷になれば、どんなに小さくても、当然、空気よりは重いのですから、

空から落ちて来ても不思議ではありませんよね。

しかし、雲はふわふわといつまでも空に浮かんでいます。

どうして雲は空に浮かんでいられるのかご存じですか?


それは、先ほどの上昇気流が原因なのです。

上昇気流は、水蒸気を地上から上空へ押し上げるだけでなく、水蒸気が水や氷になった後も、ずっとそれを押し上げ続けているのです。

つまり、雲は下に落ちたくても、落ちて来られない状態だったのですね。


そして、水や氷の粒となった水蒸気が、幾つも幾つもくっついて大きくなり、

いよいよ上昇気流が支えきれないくらいの大きさになると、下へと落ち始めます。

それが、雨や雪なのです。


ちなみに、水や氷が途中で解けたものが「雨」、氷の粒が落ちて来たのが「雪」、雨と雪が混ざったものが「みぞれ」

氷の粒が固まって大きくなったのが「あられ」、あられより大きく、直径が5ミリを超えたものが「雹(ひょう)」と言われます。



さて、みなさんは、雲をみて「雨が降りそうだ」と予想した事はありませんか?

同じ雲なのに、雨が降りそうな雲と、そうでない雲を、私達は見分ける事ができます。

では、私達はどのようにして、雨が降りそうな雲を見分けているのでしょうか?


理由は幾(いく)つかあると思いますが、その一つに雲の色があると思います。

普通に浮いている雲は白いのに、雨が降りそうな雲は黒くよどんでいますね。

これはどうしてかご存じですか?


というよりも、そもそも、どうして雲の色は白いのでしょうか?

氷は別として、水って雲のような白さじゃないですよね?


実は、雲の色には太陽の光が関係しているのです。

通常の雲が白く見えるのは、水や氷の粒が白いのではなく、それらが太陽の光を反射させて白く見えているからなのです。

あのクリームのような白さは、太陽の光のせいだったのですね。


では、雨雲はどうして黒いのでしょうか?


それは、雲の密度によるのです。


先程、雨は雲の中の水や氷の粒が、くっついて大きくなったもの、というお話をしましたが。

それは、水や氷の粒が雨になる為には、雲の中で、お互いがくっつく程、近くにいる必要があるという事なのです。

つまり、雲の中で水や氷の密度が高い程、雨が降りやすい雲だと言えるのです。


雨が降る程、密度の高い雲は、上からの太陽の光が、雲の下まで届かない、いわば「暗い」状態で、

それを下から見た時に、黒く見えるのです。


例えば、飛行機などで雲を上から見れば、雨雲でも白く見えますし、

夏に激しい雨を降らせる入道雲(にゅうどうぐも)も、遠くから見れば、綿菓子(わたがし)のように真っ白です。

つまり、雨雲が黒く見えるのは、分厚い雲を下から見ているからだったのです。



いかがでしたか、

知っているようで、知らない「雨」の話。

身近で当たり前のようにある雨も、不思議で面白い事が沢山あったと思います。


雨が登場する物語は、何処(どこ)かしら、しっとりして、もの悲しい感じのものも多いと思いますが、

その時に、こんな雨の話を思い出してしまうと、興ざめしてしまうかもしれませんね。


それでは、みなさん、またお会い致しましょう。

さようなら

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