第38話 拓馬はさ、転生とか生まれ変わりって本当にあると思う?
昼休みが終わりいよいよ学園祭に関するホームルームの時間となった。予想していた通り今日はクラスリーダーと演劇の題材を決めるようだ。
まずはクラスリーダーから決めるとの事だが、ぶっちゃけ俺としては正直誰がなっても構わない。だから話し合いそっちのけで授業の予習に励んでいる。
しばらくしてクラスリーダーが陽キャグループのメンバーである男子に決まった。
「演劇の題材を決めようか、皆んなどんどん案を出していってくれ」
鳴神先生からバトンタッチしてホームルームを仕切り始めたクラスリーダーの呼びかけで皆んな次々に案を出し始める。
シンデレラや人魚姫のような童話や、異世界転生した勇者が魔王を倒す話のようなオリジナルストーリーまで数多くの案が出たため、一旦休憩を挟んだ後で投票する形になった。
「拓馬はどの題材に投票するの?」
「個人的には異世界転生がめちゃくちゃ気になってる」
「やっぱり男の子は異世界転生好きだよね」
「アリスはあんまり興味ないかもだけど、結構面白いんだぞ」
ネット小説投稿サイトで大流行している異世界転生物は結構好きなため、時間がある時によく読んでいたりする。
「実は私も興味あるんだよね。死ぬ前に遊んでた乙女ゲームの世界で悪役令嬢に転生する話とかは面白かったし」
「あっ、それってあのアニメ化した奴か。へー、アリスもそういうのに興味あるんだな」
アリスの口から悪役令嬢という単語が出てきたため、かなり意外だった。もしかしたら隠れオタクなのかもしれない。
そんな事を思いながらしばらく異世界転生について話していると、アリスは突然急に真剣そうな顔になって口を開く。
「拓馬は転生とか生まれ変わりって本当にあると思う?」
「どうしたんだ急にそんな事を聞いてきて? 本当にあるかどうかは分からないけど、あって欲しいとは思うな。報われない人生を過ごした人には救済がないと可哀想だしさ」
俺はぼっちな事以外は割と順調な人生を歩んでいるが、世の中にはそうでない人も多い。そんな報われなかった人には神様が手を差し伸べ、次は報われる人生にしてあげて欲しいと本気で思っている。
「……そっか、私も拓馬と同じ考えだよ。やっぱりハッピーエンドが一番だから」
「そうだな、俺も胸糞悪いバッドエンドは大嫌いだ」
「急に変な事を聞いちゃってごめんね。そろそろ休憩時間も終わるから席に戻るね」
「あっ、もうそんな時間か」
どうやら思ったよりも長く話していたらしい。それから再開したホームルームで投票を行ったわけだが、残念ながら異世界転生は僅差でシンデレラに負けてしまった。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
「アリスがシンデレラ役に選ばれるのは外見的にピッタリだから分かるんだけどさ、よりにもよって何で俺が王子様役なんだよ?」
「私がシンデレラになるんだったら王子様は拓馬しかあり得ないでしょ」
「いやいや、どういう理屈だよ……」
演劇の題材がシンデレラに決まった後配役も決め始めたわけだが、なんとアリスのゴリ押しにより俺が王子様役に選ばれてしまったのだ。
当然クラス内からは反対の声も出ていて多分俺が一番反対していたわけだが、アリスは言葉巧みな説得によって反対意見を完全に押さえ込んでしまった。
「もう決まった事だし、無駄な抵抗は辞めて私と一緒に頑張ろうよ」
「まあ、任された以上は勿論全力で頑張るつもりだけど」
アリスのシンデレラ役に対して俺の王子様役はどう考えても見劣りしそうな気しかしない。そもそもシンデレラと王子様の身長が同じというのはどうなのだろうか。
何ならガラスの靴を履けば抜かされてしまうと思うのだが。ひょっとしてシークレットブーツを着用しろとか言われないだろうな。
「それより今日の夕食は何が食べたい?」
「うーん、昨日魚だったから俺的には肉系がいいな」
「じゃあハンバーグにしようか。材料がないからスーパーに寄って帰ろうね」
「分かった」
完全に夫婦みたいな会話をしているが、慣れてしまった。もう完全に感覚が麻痺してきているのかもしれない。しばらく歩き続けてスーパーに到着した俺達が買い物をしていると後ろから誰かに話しかけられる。
「もしかしてシンデレラのお姉ちゃん……?」
後ろを振り向くとそこにはシャイニングサンシティの水族館で迷子になっていたところを助けた女の子、由真ちゃんとその母親が立っていた。
「あっ、由真ちゃんだ」
「元気そうだな」
「うん、由真お姉ちゃんとお兄ちゃんにまた会えて嬉しいな」
「あの時は由真を助けていただいてありがとうございました」
俺とアリスは立ち止まって由真ちゃん達と話し始めるわけだが、そこで衝撃の事実を知る事になる。
「えっ、由真ちゃんのお母さんって鳴神先生のお姉さんなんですか!?」
「はい、妹の美香がいつもお世話になってます」
「確かに言われてみれば由真ちゃんもお母さんも鳴神先生と少し似てる気がする」
どうやら由真ちゃんは鳴神先生の姪だったようだ。それから一緒に買い物を続け、この間のお礼としてハンバーグの材料を奢って貰ったりした後で由真ちゃん達と別れた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます