第47話 拓馬にくっつきたくなっただけ
「まさか急に土砂降りになるなんて思わなかったな」
「うん、朝見た今日の天気予報は晴れだったもんね」
「マジでついてないわ」
チャペルを後にした俺達はそのまま街中をぶらぶらしていたわけだが、突然のゲリラ豪雨によって全身びしょ濡れになっていた。今は一旦屋根の下に入って雨宿りをしている。
「絶対このままだと風邪ひきそうだし、何とかして服と髪を乾かさないと」
「だよね、明日から普通に授業あるから風邪ひくのは困るし」
今いる場所から自宅までは結構距離があるため帰ってから乾かすのはあまり現実的では無い。
「近くに銭湯とかあれば助かるんだけど」
「うーん、この辺には無さそうかな」
スマホの地図アプリを見ていたアリスは首を横に振りながらそう答えた。明日から普通に学校なため風邪をひいて休む事は絶対に避けたい。そんな事を思っているとスマホを見ていたアリスが声をあげる。
「あっ、銭湯じゃないけど近くで髪と服を乾かせそうな場所を見つけたよ」
「良かった、とりあえずそこに行こう」
「オッケー、じゃあ案内するね」
それから俺達はアリスの案内で屋根伝いに移動しながら目的地を目指す。しばらくして到着した場所は城のような外観をしていた。うん、どっからどう見てもラブホテルじゃん。
「じゃあ中に入ろう」
「もはやツッコミを入れる気にすらなれないわ。でも確かにここなら服と髪を乾かせそうだな」
とりあえず中に入った俺達はパネルを操作してエレベーターで部屋へと向かう。ラブホテルに来るのは二回目のためその辺りはスムーズだった。
「とりあえずシャワーを浴びようか」
「そうだな、服はその辺に吊るしとけばいいだろ」
俺とアリスは着ていた服を全て脱いで裸になると浴室へと向かい、二人で仲良くシャワーを浴び始める。
「やっぱり温かいお湯は気持ちいいね」
「ああ、雨で濡れた後だからか余計にそう感じる」
満足するまでシャワーを浴びた俺達は浴室の前に準備してあったバスタオルで体を拭く。それからバスローブを着て浴室を出た俺達はドライヤーで髪を乾かし始める。
「よし、こんなもんだろ」
「男の子は髪が短いから乾くのが早くて羨ましい」
「女の子は絶対その辺大変だよな」
まあ、男には男の大変さが色々とあるためどっちが楽とは一概に言えない気はするが。とりあえず髪を乾かすという目的を達成した俺は椅子に腰かけてテレビを見始める。
また以前のように大音量でAVが流れ始めても困るためチャンネルの操作はかなり慎重に行なった事は言うまでもない。少しして髪を乾かし終わったらしいアリスが俺の隣にやってきた。
「まだ服は乾いてないみたいだからしばらくはここにいなくちゃだね」
「まあ、あれだけびしょびしょに濡れたんだから仕方ないよな」
確か三時間まで料金が一緒となっているため慌てて出る必要は無い。それにまだ雨が止む気配もないし、ここでゆっくりするのもありだろう。そんな事を思っているとアリスが思いっきり体を密着させてくる。
「どうしたんだよ、急に?」
「拓馬にくっつきたくなっただけ」
アリスはそう言いながら何かを期待したような表情を浮かべながら熱を帯びた目でじっと俺の事を見ていた。アリスが何を求めているかすぐに気付いた俺はゆっくりと口を開く。
「……ベッドに行くか?」
「……うん」
俺達はバスローブを脱ぎ捨てて生まれたままの姿になると二人でベッドの中へと入る。そして俺達はそのまま愛し合った。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
「雨上がってくれて良かったね」
「ああ、あのまま降り続いてたら帰るのが絶対面倒だったし」
ラブホテルを後にした俺達は歩きながらそんな会話をしながら歩いている。
「明日からまた普通に学校か、通常授業に戻って時間も長くなるからマジで憂鬱なんだけど」
「そっか、今までは学園祭準備があったから午後は授業無かったもんね」
「しかも来週は実力テストもあるから勉強もしないといけないし、いつもの日常に逆戻りって感じだよな」
「確かに学園祭がめちゃくちゃ楽しかった夢から目覚めた感じがするよ」
一応十月には修学旅行という楽しいイベントも待ってはいるが、それまではひたすら勉強に励まなければならない。
「それより今日の夕食は何が食べたい?」
「今日はカレーライスの気分かな」
「オッケー、美味しいのを作ってあげるから期待してて」
「アリスの作るカレーライスはマジで美味しいから楽しみだ」
明日から学校で萎えていた気持ちがカレーライスによって楽になった事を考えると、俺は自分で思っているよりも遥かに単純な人間なのかもしれない。
それからバスと電車を乗り継いで一度自宅まで帰ってきた俺達はカレーライスの材料を買いにスーパーへと足を運ぶ。
「こうやって二人で買い物するのも当たり前になってきたよね」
「そうだな、同棲を始めてから何度も一緒に来てるしな」
「多分結婚してからもこんな風に二人で買い物をしてるような気がするよ」
しばらくしてカレーライスを作るのに必要な材料を買い物かごに入れ終わった俺達は会計を済ませて家に帰った。
「じゃあ私は夕食の準備をするから」
「頼んだ、俺は他の事をしておくよ」
基本的に料理はアリスに全て任せているため俺はその他の家事全般を担当している。風呂掃除と洗濯、部屋の掃除を済ませたタイミングでちょうど夕食が完成したらしく美味しそうな匂いが漂ってきていた。
「お待たせ、食べようか」
「相変わらず美味しそうだな」
早速カレーライスをパクリと一口食べる。
「うん、めちゃくちゃ美味しい」
「でしょ、拓馬の好みの味にするために未来で何度も試行錯誤を重ねたんだから」
なるほど、それでここまで完璧に俺好みの味を再現出来ていたのか。食がどんどん進みあっという間に完食した事は言うまでも無い。
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