第6話 二対のホシ②
*
大きな爆発によって巻き上がった煙塵が晴れてくる。
そこに赤い九芒星の姿は無く彼女の残骸らしきモノだけが散らばっていた。
そんな砕け散った赤いホシの残骸を青いホシは絶望の面持ちで見つめているようだった。
『
そこから滲み出るのは怒りの感情。青いホシからは表情も仕草も全く読み取れないのに『怒り』という感情だけははっきりと読み取れていた。
「…………ふざけんな」
身が凍るような怒りの中、水を差す声が。
今まで黙っていたイブキが絞り出すように声を上げたのだ。
「…………ふざけんな」
今の彼女が滲み出す感情も『怒り』だ。
それは目の前の青いホシの身勝手さに怒っていた。
「奪っておいて………… お前だけ怒るな!」
脳裏に浮かぶのは5年前の記憶。金色のホシ達に街を蹂躙され大切な人が奪われた過去。
両親を故郷をそして未来を。ホシ達は彼女のありとあらゆるものを奪った。そんなホシが今、仲間を奪われて怒っている。
ふざけるな 怒りたいのは私だ 奪った奴が何勝手に怒ってやがる
「お前の言葉は知らない だけど丁度いい、私の怒りとお前の怒り。どちらが大きいか勝負しよう」
そう言うと彼女は青いホシの前に立つ。
感情が
「イブちゃん…………」
心配そうに声をかける
彼女は振り返るとギラついた笑顔をハトに見せた。
「大丈夫よハトちゃん 私が勝つんだからね」
そうして青いホシを見据え対峙した。
青い九芒星は自身の身体を淡く光らせ、イブキは背中に背負った大きな縦長の箱に触っている。
「…………」
ジリジリとした緊張感がこの広場を包み込む。その様相は西部劇のガンマンの決闘のようだ。
悲劇の舞台に舞う一陣の風、凍りつく空気。そして、コトリと落ち始めた瓦礫。
「!!」
瓦礫が落ちたのと同時にイブキは手に持った
バン バン バン。三発のオレンジ色のビームが青い九芒星へ迫る。
それに対して青い九芒星は身体を輝かせ強烈な冷気を放った。
冷気は光である芒炎鏡のビームを凍らせ、そのままイブキに襲いかかる。
光すら凍らせるその様相はまさに絶対零度。迫り来る絶対零度がイブキの目の前まで迫り。
その全てが吹き飛ばされた。
後ろで見守っていたハトとメイアが目を見開きソレを見た。
ソレはイブキの背負っていた細長い大きな箱。その箱から吹き出た強力な風圧が冷気を吹き飛ばしたのだ。
そしてイブキは静かに言葉を紡ぐ。
「
その言葉と同時に彼女の背負っていた細長い大きな箱が重たい音を立てながら地面に落ちる。
そしてガシャリガシャリと機械音を響かせながらその形を変形させた。
それは一本の真っ白な大剣。
彼女の身長ほどある大きさの大剣がそこにあった。
天門台の決戦兵器『
そして柄を両手で握りしめ力を込める。
大剣からはうっすらとオレンジ色の光が浮かび上がっている。
「いくよ」
体勢を低くし、大剣を担ぐように構えながら青い九芒星に目掛け跳んだ。
迫って来るイブキの姿に青い九芒星は一歩も動けない。まるで彼女の姿に見惚れたかのように。
この時 童話の街から一瞬だけ音が無くなった。
パチパチと炎が燃える音も ヒューと風が吹く音も ガランと瓦礫が崩れる音も。この瞬間だけ、全ての音が凍り付いたのだ。
そして凍り付いた音を断つ一太刀がホシに向けて振り下ろされたのだった。
九芒の身体は真っ二つに両断され、別れた身体が青から黒へ変色し、コロンという軽い物の落ちる音が二回、この広場に響き渡ったのだった。
悲劇の舞台を彩っていた炎も冷気は既に消え去っており眩しいほどに輝くオレンジ色の太陽がイブキ達を照らしていた。
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