星空を見上げれば〜私達は星々の夢を見る〜

ジョン・ヤマト

プロローグ 星空の消えた世界


 笑って、泣いて、怒って、そして悲しんで。

 私達は様々な感情が溢れる広い世界で生きている。

 でもいつか気付くんだ。広大と感じた世界が『小さな世界』だったということに。





    *


 砂煙が漂う真昼の街。過去には繁栄の光を夜空に照らし聳えそび立ったビル群も今では崩れ去り肌色の風を吹かせることしかできなくなっていた。


 そんな栄光が過ぎ去った廃墟の街の遥か上空に星の形をした影があった。


 星の形をした影は身体を白く輝かせると同時に身体から数本の光線を発した。


 その威力は強大で光線の一つが廃ビルを貫き、大きな穴を作るほどだ。


 そんな危険な光の雨が降る場所で走る者が一人。


『コードI 目標までの距離10 芒炎鏡の射程内に到達した』


 それは白い戦闘服に身を包んだ少女だった。


 コードIと呼ばれた少女は通信機からの声を聴き、走りながら手に持った武器を上空に飛んでいる星に向け引鉄を引いた。


 バンという発砲音が響き武器からオレンジ色のビームが星に向けて放たれる。


 ビームは一瞬で星の元に迫り、大きな爆発音と共に直撃した。


「当たった…………!」


 少女のこもった声が静かなビル群に木霊する。


 ビームを受けた星はその身に大きな風穴を空けられ、ひらひらと地面へ落下した。


「目標討伐」

『討伐を確認 コードI 帰投せよ』

「了解」


 通信機からの命令を受け、少女はこの場から立ち去った。


 残ったのは栄光の過ぎ去ったビル群とどす黒く変色し穴の空いたの死体だけだった。





    *


 私たちの世界から『夜』が奪われた。


 20年前 アメリカネバダ州の上空に突如としてヤツらが現れた。


 『ホシ』の形をしたヤツらは米軍を屠りアメリカの街をことごとく破壊、更地と化したホワイトハウスを背景に巨大な十二芒星の形をしたホシが全人類に対してこう言った。


『我々はソラからの使者 ヨルは我々がいただいた』


 その日を境にこの世界から夜の暗闇が無くなり、太陽が私達を常に照らし続けた。


 十二芒星のホシの言葉は明らかに人類に対しての宣戦布告だった。


 その直後からホシはアメリカを中心にして世界中に攻撃を開始。カナダ、メキシコなど周辺の国々はホシ達によってそこに住む人達ごと滅ぼされた。

 

 しかし人類は諦めなかった。世界中を襲うホシに対し、世界各国は『星物抗戦条約』を締結。この条約締結以降、皮肉にも人類同士の大きな戦争は無くなった。


 そして世界中でホシへの対抗策の研究が進められた、そしてその対抗策はすぐに完成する。


 ニホンの研究機関が『芒炎鏡ぼうえんきょう』と呼ばれるホシに対して有効な兵器の開発に成功したのだ。


 しかしこの『芒炎鏡ぼうえんきょう』という兵器は『特定の条件を満たした女性』にしか扱えないという欠点があった。


 政府は各方面からの反対を無視して政府直轄のホシ対策部隊 通称『天門台てんもんだい』を設立。条件を満たした二百人の女性を半ば強制的に入隊させたのだ。


 その成果はすぐに現れた。天門台てんもんだいはホシ達のトウキョウ襲撃の阻止を見事に成功、人類はホシに対抗する手段を手に入れた。


 天門台てんもんだいに所属する女性達は『人類の新たな守護者』と呼ばれ人類を守る担い手とされた。


 これはそんな夜の奪われた世界で戦う少女達の物語だ。

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