第3話 作戦開始

     *


 晴々とした空に肌色をした砂混じりの風、ホシに壊滅させられた街の光景はいつも同じだ。


 そんな場所を一人は大きな縦長の箱を、一人は小さなバックパックを、一人は大きなバックパックを背負いながら真っ白な戦闘服を着た三人組は崩れた道路を俊敏に駆け抜けていた。


 『Helloハロー Happyハッピー Worldワールド!』と書かれた可愛らしい巨大看板を横目に通り過ぎるとテーマパークの入場ゲートらしき場所に到着した。


「チームE 指定ポイントに到着」

『了解 チームE その場で待機せよ』

 

 通信機からの命令に従い三人はその場に伏せて待機する。


 ふと入口の奥を見てみると崩落した大きな像が見えた。


 あれは世界的に有名なキャラクターだったか イブキはそんなことをぼんやりと考える。


「静かね」

「うん」


 以前だったらみんなの楽しそうな声が響いたであろうこのテーマパークは今や子供の声一つしない廃墟と化しておりその退廃的な雰囲気に少し寂しさを感じた。


 そうして周りを警戒しながら入場ゲートの奥の様子を伺っているイブキにメイアが話しかけてきた。


「この先に沢山のホシの気配がするわぁ」

「…………つまりここにターゲットがいるのは確実ですね」


 イブキの胸中はあの金色の十芒星を倒すことを思い描いている。


 まだか まだか。ご飯が待ちきれない子供のように通信機から指令が来るのをそわそわとしながら待っていた。


 そして5分もしないうちにその時は訪れる。


『全チームに告ぐ 命令に従いターゲットを討伐せよ』


 その言葉を待っていた。そう言わんばかりに立ち上がったイブキの芒炎鏡ぼうえんきょうの持つ手に力が込められた。


『ケース・ヴィーナス 作戦開始!』


 合図と共に入場ゲートを潜りテーマパークへ侵入した。


『よ…ようこそそそ ここは幸せせいっぱいのハッピーワールドドド! みんな楽しんでいってね ガガガガ…………』


 入場ゲートから流れる電子音声を無視しながら三人は目的の場所に向けて走って行く。が。


『………………』

「五芒と六芒 数は10よぉ」


 合計十体の白色の五芒星と六芒星の形をしたホシ達が彼女達の行く手を阻んだ。


「エンカウント」


 先手必勝 イブキはホシ達の集団に狙いを定め自身の芒炎鏡のトリガーを引いた。


 バンという発砲音が鳴りオレンジ色の細い光がホシ達に迫り、そして先頭に立っていたホシの身体を貫通させた。


 身体に穴を空けられたホシは身体の色が黒くなりそのまま地面に落ちた。


『…………!』


 仲間を倒されたホシ達はこちらに対して強い敵意を示すと身体を発光させ角のような場所から光線を撃ち出した。

 

 しかし長年ホシとの戦い続ける彼女達はその攻撃を容易に避ける。


「ざーんねン!」


 ハトはその小さな体躯を活かし攻撃の隙間を縫うように避けながらバンバンバンと芒炎鏡を発射。三体のホシに命中させた。


「残りは六体」

「このまま一気にやるよ!」


 光線による攻撃が通用しないとわかり、ホシ達は接近戦を仕掛けようと手裏剣のように身体を回転させながら突っ込んで来る。


 六体の内、三体のホシはイブキへ残りの三体がハトの方へ迫った。

 

「はあ!」


 この攻撃に対してイブキは地面を蹴り、最初に突っ込んで来たホシに向かって飛び上がった。そして空中で回転し攻撃を避けると着地と同時に芒炎鏡のトリガーを引いた。一体目。


 そして着地で伏せた状態から身体全体をバネのようにしながら宙返りで飛び、攻撃を避けながら背後に回り込むと再びトリガーを引き二体目のホシに命中させる。

 

「ラスト!」


 背後から迫る最後の一体、腰を捻りながら身体全体を回転させると同時に芒炎鏡を地面から水平に構えて連射させる。


 バン バン バンと回転による遠心力と連射による反動を利用した振り返りながらの擬似的な斉射。これを避ける術はホシには無かった。

 十秒にも満たない短い攻防だった。


 さて、一方ハトの方はというと。


「いやーこっち来ちゃったかぁ」


 迫ってくるホシに対して回避するでもなく迎撃するでもなく。ただただ棒立ちで笑いながらホシが来るのを待っていた。


 徐々に距離が詰められ三体のホシの回転攻撃が一斉にハトに向かって襲って来る、と思いきや。


「ざーんねン!」


 ホシ達はハトの目の前で静止してしまう。いや違う、静止

 ホシ達のいる地面には四角形の黄色い物体が設置されておりそこから強力な電流が流れていた。


 これは天門台が開発した罠型兵器『星電器せいでんき』。強力な電磁波により対象を拘束することができる対ホシ用兵器だ。


 ホシは拘束から脱出しようともがくが一向に抜け出せない。


「これでおしまい!」


 そしてハトは拘束され無防備になったホシに向かって無慈悲に芒炎鏡の引き金を引いたのだった。


 十体のホシを倒した二人は何事も無かったかのようにメイアの元に戻った。


「二人ともすごいわねぇ。私がサポートする必要も無かったわぁ」

「五芒星や六芒星ぐらい大したことありませんよ」

「そうそう! 目的は十芒星だからネ!」


 目の前に倒れている五芒星と六芒星のホシは簡単に言えば下っ端のザコ。今の彼女達には敵にもならないだろう。


 それにまだ作戦は始まったばかり、金色のホシを倒すまで決して油断できない状況だ。


「それでは先を急ぎましょう!」


 イブキの号令と共に三人はターゲットを目指し、テーマパークを走り始めた。

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