第2話 ブリーフィング

    *


 次の日になり イブキとハトの二人は天門台てんもんだいにあるブリーフィングルームに集められた。


 周りには自分達を含め15人の隊員がおり 正面のモニターの前にニホン支部の支部長であるエレンが立っていた。


「これより金色の十芒星討伐作戦『ケース・ヴィーナス』のブリーフィングを始める!」


 支部長がそう言うとモニターがパッと起動しある映像が再生された。


「今回のターゲットは『ヴィーナス』 現在6体しか確認されていない敵の最高戦力『十芒星』の一つだ。まずはこの映像を見てくれ」


 それは5年前に金色の十芒星が出現した時の映像。


 そう、イブキとハトが天門台に入隊するきっかけとなった出来事を映した物だ。


 その内容は凄惨の一言に尽きる。上空に鎮座する金色のホシが一度身体を輝かせるとレーザーが放たれ閑静かんせいな住宅街を壊滅させた。


「映像にもある通りターゲットは最高戦力の名に恥じない強力なパワーを有している。それに加え方法は不明だが他者に対し精神異常をもたらす能力が確認された。この能力を受けた者は精神が暴走し周りの人間に危害を加えるようになる」


 その言葉の通り 金色の十芒星の襲撃直後に街の人々が暴徒と化して他の住人を襲っていたのだ。


「…………ッ」


 握った拳に力がこもる。


 そしてあの時体験した記憶が脳裏にぎった。逃げ惑う人達の阿鼻叫喚の声。そんな人達を襲って来るホシとニンゲン。その光景はまさに地獄そのものだった。


 映像が終わると支部長はテーブルをバンと叩き言葉の語気を強める。


「我々はこの事件で亡くなった人達の無念を晴らすために 今回の作戦でこの金色の十芒星『ヴィーナス』を絶対に倒すのだ!」

「………………」


 『絶対を倒す』 支部長の言葉にこの部屋にいる全ての隊員の眼の色が変わった。


「『ヴィーナス』は廃墟となったテーマパークでその姿が確認された。我々は一組3人チームを5チーム編成 各チームがテーマパークの東西南北から近づき一気に攻め込む」

 

 簡単に言ってしまえば相手の逃げ場を塞ぐようにする作戦だ。この機会を逃すと次の機会がいつ訪れるのかわからない。故に失敗は絶対に許されない。


「ではこれよりチーム編成を発表するまずAチームはアナ ヒバリ レイ。Bチームは …………」

 

 こうして続々とチームの編成が決められていき。


「最後 Eチームはメイア イブキ ハトだ。それでは1時間後に移動を開始する それまでに準備を整えるように」

「はい!」


 そうして支部長はブリーフィングルームを後にし、残った隊員達も各々出撃の準備のために部屋から退室して行く。


「わたしたちも行こっか」

「そうだね」


 イブキはハトと一緒に部屋を出ようとしたところ、背後から声を掛けられた。


「イブキさんとハトさん 今回はよろしくお願いしますねぇ」


 それは大きな体躯にほがらかな表情をした赤茶髪の女性だった。


 彼女はイブキの先輩でありこの作戦で同じチームになる『メイア』だ。


「こちらこそよろしくお願いします!」

「あ! メイちゃんだ!」

「うふふ 元気いっぱいねぇ」


 このニホン支部では3番目に高齢の人であり、後方支援専門の隊員。彼女の活躍で成功した作戦がいくつもあるほど優秀な隊員だ。


「私が二人をしっかりサポートするから頑張ろうねぇ」

「メイアさんがいるなら心強いです!」

「メイちゃんも頑張ろうね!」


 頼れる親友に頼れる先輩。恵まれた仲間達に囲まれながら彼女は死地へ赴くおもむために歩き始めた。

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