第17話 暴走する彼女
時計の針は11を過ぎている。
もう眠くて眠くて仕方ない時間帯なのだが。
まだ電気はこうこうとついている。
「だからわらしは思ったの。言わないといけなきゃって! ここしかないんらって!」
アルコール入りのチョコを食べてから約2時間。
芽愛ちゃんは一切休憩せず、別れてたときのことを語っていた。
舌が回ってないのは全く変わってない。
最初はそう思ってたんだ……と、素直に聞き入っていたのだが。
20分経った頃、同じ内容の話をし始めてしまい……。
約2時間、そのループから外れることはなかった。
話の途中で中断するのは楽しそうに喋ってる芽愛ちゃんに申し訳ないと思い、黙って聞いてたけど。
俺、結構頑張ったよな?
「芽愛ちゃん。ずっと同じ話してるよ」
「……へ?」
「20分おきに毎回話が最初に戻ってる」
「そんらわけないじゃん。かじゅまくん、わらしが不器用だって思ってるだろうけどそこまでばかじゃないらー!」
「あ、ちょ!」
なんか逆ギレされちゃったし、その勢いでアルコール入りのチョコをもう一つ口に入れちゃったんだけど。
またまともに喋れる状態に戻るまで約2時間、か。
俺もう眠ぃよ。
本格的にうとうとし始めきた。
「わらしーは彼女ぉー。わらしーは彼女ぉー」
へんてこな歌を聞きながら寝落ちしそうになり、目が閉じかけていたとき。
いつの間に隣に移動していた綻んだ顔の芽愛ちゃんに、頬を突かれた。
「こんなのところで寝たら、らめっ。しかたらないらぁ〜わらしが手伝ってあげる」
「うおっ」
抵抗する力がなく、無理やり頭が下げられ。
頭に柔らかい感触が伝わってきた。
これは……膝枕だ。
「んひひぃ〜」
芽愛ちゃんは酔っ払うと欲望に忠実になるのだろうか。
さっきから頭を優しく撫でられてる。
膝枕をしてもらったのはあるけど同時に頭撫で撫でなんて、今まで一度もされたことなかった。
頭を撫でられるのって意外と良いんだな……。
心地いい空間のおかげで徐々に意識が落ちていき、再び寝そうになっていたが。
「っ!」
それを拒否するかのように、突然口づけされた。
チョコとアルコールの味がする。
「め、芽愛ちゃん……?」
「へへっ」
ぺろっと舌で唇を舐め、いたずらが成功したような顔を向けてきた。
何なんだよ全く。いきなりキスしてくるなんて、酔っ払った芽愛ちゃんは話がループする以外最高じゃん。
「わらしは彼女ぉー」
こんなことしておいて、酔ってるから明日になったらぽっかり忘れてるんだろうなぁ〜……。
酔っ払って、膝枕されたままキスされたのは俺だけの秘密ってわけか。
それもまたいいな。
▶▶▶
見渡す先は全てきれいな青い海。
ここは我が家から遠く、遠く離れたとある無人島。
芽愛ちゃんに連れられた、この海の別荘だけでお腹いっぱいだったが。バルコニーから見る水平線のおかげでなんとか冷静になれる。
まぁ無人島だって思うと落ち着きが無くなりそうになるけど。
「一馬くーん。砂浜で遊び行こぉー!」
「今行く」
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