第18話 本気と書いてマジ

「今週三連休だけど何か予定ある?」


 講義終わり。


 芽愛ちゃんはなぜか少し恥ずかしそうにしながら聞いてきた。


「なんもないよ」


「へ、へぇ〜そっかそっか」


 そこで会話が終わりそうだったが。


 流石にこれは何か誘おうとしてるんだろうな、と思って無理やりつなぎとめた。


「芽愛ちゃんは三連休中なにかやることあるの?」


「私もなにもないよ。……だからよかったら」


 芽愛ちゃんはぐっと歯を食いしばり。

 俺の服の裾をギュッと引っ張り。


「海の別荘に遊びに来ない?」


 てっきり俺の家に遊びに来ていいのか聞いてくると思っていたので、予想外の誘いに息が止まった。


「その海の別荘ってこの前話してたところ?」


「うん。お母さんが二人で行ってもいいよって。無人島にあるから思う存分遊べるよ」


「すごっ」


 無人島の別荘なんてすごすぎる。普通の人なら腰を抜かしててもおかしくない。

 が、俺は芽愛ちゃんのお母さんが話に入ってきたせいでなにか裏があるんじゃないかと疑ってしまう。


 アルコール入りのチョコの一件は間違えた、ということで話は終わったけど。


 今回もなにか企んでるに違いない。

  

「念のため聞きたいんだけど、芽愛ちゃんのお母さんって他になにか言ってた?」


「ん? えーっと。暇だったら私も遊びに行こうかしらぁ〜とか言ってたかも」


 まじかよ。


「あっあと、お母さんの話じゃないけど妹も来るかもって言ってた」


 まじ、かよ。


 侑愛さんはなにか勘違いされてそうだから、会うの気まずいんだよな……。


「二人来るかもしれないけど、ちょっとしたら帰るって言ってたからあんま気にする必要ないよ」


「俺たちってその海の別荘にどれくらい居る予定?」


「私はできれば三連休中ずっといたいけど……。最終日は天気が悪いらしくて船出せないとか言ってたから、二日間かな。一馬くんいける?」


「もちろん。誘ってくれてありがとう」


「っ。そんな顔されると調子狂う」


 芽愛ちゃんは頬を赤く染め、目をそらしてきた。


 そんな顔とか言われたけど、普通に笑顔だっただけなんだけど。


「今回はマジだからね」


「なにが?」


「いつも一馬くんにリードされてるけど、今回は本気と書いてマジで一馬くんのことリードして、デレッデレに惚れさせるんだから!」


 やけに気合が入ってるな。


 ……あ、もしかして。


「アルコール入りのチョコを食べたあとの記憶なくて、変なことしたりされたと思ってる?」


「お、お、お、思ってないし! とりあえず無人島に行く船の場所後で連絡するから!」


 芽愛ちゃんは慌ただしくそう言って、逃げるように俺のもとから去ってしまった。

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