第16話 なにもないはずがなく

 俺たちは家に帰りあった後。まだ夕方だったため、今季評価が高いアニメを二人で見た。


 推しの話で花を咲かせてしまい、そのせいでパーティーが始まるのは20時になってしまったが……。

 芽愛ちゃんも俺も楽しい時間を過ごしていたので、時間なんて気にしてなかった。


「ピザはデリバリー取ったほうが良かったね」


「俺、今までデリバリーしたことないから違いがよくわからん」  


「もう別物だよ別物。ま、こういうカリカリしてるピザも美味しいからこっちもこっちでいいけど」


 芽愛ちゃんはもう、これがパーティーという名目で始まったって忘れてそう。

 

 だって食べ物に夢中だし。


 まぁ深く追求するほど、俺は空気を読めない男じゃないから気にしないどこう。


「そういえばダイ」


「ん?」


 空気を読めない男じゃないって思った矢先、「ダイエットっていいの?」って聞きそうになっちゃった。

 

 適当に誤魔化さないと。


「あ、あー……えっと、そういえばダイオウイカがこの前海辺に打ち上げられてたってニュースを見た気がして」


「なるほど。一馬くんはそれを食べてみたかったんだね」


「…………そう」


 めちゃくちゃ俺がバカみたいになってるんだけど!


 し、仕方ない。これは俺が悪いんだから堪えないと。


「海辺、海辺ねぇ……。私、結構海辺にある別荘に行ってるけど魚が打ち上がってるところあんま見ないな〜」


 別荘なんて言葉テレビ以外で初めて聞いた。


 お金持ちだってことは知ってたけど、俺が想像してる以上なのかな。


 そんなこんなで豪華な料理を雑談しながら楽しく食べていたのだが。 

 ある程度食べ終えたとき。

 事件は起きた。


「そーいえばお母さんから一馬くんにって、チョコもらってたんだった」 


「へぇ……。まだ会ったことないけど、会ったらお礼しないと」


「いいよいいよ。お母さん、ただの自己満でこういうことするし。……口直しにちょっともらってもいい?」


「どうぞどうぞ」


 芽愛ちゃんは、高級そうな箱の中から小さなチョコを1つパクリと口にした。


 食べた直後はなにもなかった。

 それから数分後。


「んへへぇ〜。くるしゅうないっ!」


 頬を赤く染め、舌が全然回ってない芽愛ちゃんがそこにいた。


「かじゅまくんも食べないの?」


 泣きそうな声で言われ流されそうになったが、慌てて裏の表記を見る。


「アルコール度数3.2パーセント……」


 いやこれアルコール入りのチョコだったのかよ!

 

 芽愛ちゃんのお母さん、とんでもないもの渡してきたな……。


「わらしをみて!」


 両手で無理やり顔を動かされた。

 

 普段の引っ込み事案な芽愛ちゃんが、考えられないくらいべろんべろんに酔っ払ってる。

 

「わらしが彼女なんだから!!」


 不満そうに頬を膨らませ、俺のほっぺたを両手でモミモミしてきた。


 酔っ払った芽愛ちゃん、どうしよう……。

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