俺にだけキツくあたる彼女と別れたら甘えたがりになって帰ってきた

でずな

第1話 別れ話

 俺、三山みやま一馬かずまはこの間大学生になり、念願の彼女ができた。

 彼女の名前は斎藤さいとう芽愛めめ。同じ大学一年生で、誰もが認める美女だ。 


 たまたま隣の席で講義を受け、仲良くなり。

 少しして俺が告白。そんな怒涛の勢いで付き合うことになったのだ。が、全てがうまくいくことはない。


 今は6月。付き合ってから2ヶ月が経った。

 美女と付き合うなんて夢のまた夢のようなことだが……俺はもう限界だ。

 

 芽愛ちゃんからキツく当たられて、もう耐えられない。このままじゃ大嫌いになりそうなところまで来ている。


 付き合って一週間もしないで、俺にキツく当たってきてた。

 最初はツンデレなのかな? 

 と、ニヤニヤしていたが、今の今までデレたことが一度もない。一番つらいのは俺にだけキツく当たってきてて、他の人には今まで通り優しく接してるところだ。


 はぁ。なんでこんなことになっちゃったんだろう……。

 今まで何度も何度も「キツく当たられてつらい」って相談したけど、聞いてもくれなかった。


 これ以上付き合ってたら俺が持たない。

 もう、別れ話を持ちかけるしかない……。


「なに」


 芽愛さんのことをカフェに呼び出したが。


 冷たく一言放ち、俺なんていないも同然にアイスコーヒーを飲み始めた。

 

 付き合う前はもっと前のめりで、もっと俺に甘えるようなことをしてくれてたのに。

 これが女性の本性ってやつなのか。

 受け入れたいけど、苦しすぎる。


「芽愛ちゃん。今日は大事な話がある」

 

 大きくため息を吐き、面倒くさそうにコーヒーカップを置いてきた。

 早く話して、と言わんばかりに冷たい顔が向いた。


 怖いけど、切り出すか。


「実は今日呼び出したのは他でもなく、別れ話をするために……」


「え?」


 なんで別れ話をされてるのかわかってないっぽい。


「あの、さ。俺、ずっと芽愛ちゃんにキツく当たられてもう限界なんだ」


「…………」


 身に覚えがあったのか、顔を伏せて黙り込んでしまった。

 美女さんだけあって、何も言ってないのに慰めたくなっちゃう。この人と彼女だったなんて、今思えば奇跡みたいなものだったんだな……。

 って、過去を振り返ってたら決心が鈍る。

 俺は別れる。そう決めたんだ。


「告白したのは俺だけど、ごめんなさい。思ってたものと違かった」 


「そう」


 納得、してくれたのか?

 

「別れていい?」


「…………」


 何も言わず、ゆっくり首を縦に振ってきた。


 承諾してくらたならもうこれ以上話す理由はない。


 俺は財布から少し余分に自分の注文した代金を取り出し、テーブルにおき。


「じゃあさようなら」


 芽愛ちゃんの反応を見るのが怖く、顔を向けずに立ち上がり。

 

 俺はキツく言われなくなるという開放感と、初めて彼女と別れた苦しさを覚えながら、カフェをあとにした。





【あとがき】

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