第2話 見覚えのある訪問者
人生初彼女と別れて一週間が経った。
大学ではすでにあの二人が別れた、と噂が広まっている。でも、なぜか理由までは広がってない。
そのせいで俺が大学に行くと、色んな人から理由を聞かれるが……仕方のないことだと思って割り切ってる。
元カノの芽愛ちゃんは何も言ってないらしいので、俺も言わない。
そんな少し変わった大学生活を送りながら、もっと彼氏として上手くできたんじゃないか、と悔やむ日々が続いている。
フッてせいせいはした。毎日が明るくて楽しい。が、彼女という存在がどれだけ大きかったのかを実感している。
毎朝通話するのが日課だったけど、思い返せばあれはラブコールじゃなくてアイスコールだったな。
と、そんなふうに付き合ってた頃を思い出しながらアイスコーヒーを飲んでいると。
ピーンポーン
インターホンが鳴った。
「ん?」
俺は何もネットで頼んでないんだけど……。
もしかして宗教の勧誘かなにかか?
よくわからないが、見に行くと足音でバレそうだしこんなときは居留守するに限る。
それからしばらくして。
外から人の気配がなくなり、俺はまだ誰かいるのか確認するため恐る恐るドアスコープを見ると。
そこには誰もいな……。
「あ」
人がいた。けど、視界ギリギリのところで座り込んでて誰なのかわからない。
髪の毛が長くて女性なのはわかるけど……。
部屋間違えてるのか?
このままじゃ可愛そうだし、教えるくらいはしてあげるか。
「あのー。多分、部屋間違えてますよ」
女性は突然立ち上がり、ぐるっと体を180度回して俺と向き合った。
「あのー……」
言葉がが出てこない。
ものすごく見覚えがある人だった。そして、今一番会いたくなかった人。
「なんで」
なんで芽愛ちゃんがこんなところにいるんだ。
それも、目が真っ赤に充血していて涙を流している。
体を小刻みに震わせ、立っているのもやっとのようだ。
「……どうしたの」
芽愛ちゃんは俺の質問に答えず。
涙を流し始めた。
充血してた理由って、泣いてたからなのか。
……そんなことわかったって、もう別れたんだから俺には関係ない話。
だからそんな甘えるような目をしないでくれよ。
「ごっ、ご、ご、ごめ、ん。ごめ、んなっさい」
何に対しての謝罪なのか言ってないけど。
キツく当たってたことを言ってるんだろう。現に今の芽愛ちゃんはキツくない。逆に前より、甘えたいような空気を感じる。
「「…………」」
でも、謝られたってどうすりゃいいんだよ。
というかこんな泣いてまで俺のところに来て、ただ謝りに来ただけなのか?
俺が知ってる芽愛ちゃんは、そんな優しい人じゃ……。
そんなふうに考えていると、ご近所さんたちが俺たちの方を見てコソコソ喋っているのが見えた。
このままじゃ変な噂を立てられる。
俺は扉を開き、手招きした。
「とりあえず、入りなよ」
「……うんっ。あり、がとう」
はぁ。今一緒にいられると、付き合ってて楽しかった頃のことを思い出して苦しいのに……。
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