第20話 羞恥バトル
無人島に着き、海の別荘と言われていた大きな木造の家を前にして。
船酔いでダウン寸前の二人がついにダウンした。
「はぁはぁ……侑愛さんも船酔い、ですか」
「三山さん、船酔いなんかでダウンして情けないですね。そんな感じじゃ、お姉ちゃん戻してもらうことになりますよ」
「戻してもらう……?」
芽愛ちゃんは地面に置いてた俺の荷物を背負い、俺たちのことチラチラ見て呟きながら通り過ぎた。
俺はちょっと気まずかったが。
侑愛さんは一切気にせず膝を地面に着き、船酔いで苦しそうな顔を向けている。
なんという図太い精神。
さすがお姉ちゃんっ子だ。
「私、お母さんから聞きました。三山さんお姉ちゃんとイチャイチャラブラブしてるって」
侑愛さんはキッと鋭い目で。
一本の人差し指を向けてきた。
「勝負です。もし三山さんが私よりお姉ちゃんのことを恥ずかしがる顔にできたら、妹として譲ってあげます。……イチャイチャラブラブしてる彼氏なら、それくらい簡単ですよね?」
動物園で認めさせることができたと思っていたが。
やっぱり、まだ納得してなかったみたいだ。
ちゃんとした彼氏になるのなら、相手のご家族から信頼がないとダメだと思う。
「いいですよ。海の別荘の中にいる芽愛ちゃんのこと、恥ずかしがる顔にさせにいきましょう」
「うんうんっ!」
最初は喧嘩腰だったのに、やけに乗り気だ。
もしかして、ただ芽愛ちゃんの恥ずかしがる顔を見たいだけだったりして……。
▶▶▶
「芽愛ちゃん」
「お姉ちゃん」
「え。な、なに? なにが始まるの?」
椅子に無理やり座らせた芽愛ちゃんは俺と侑愛さんの顔を交互に見て、すぐ異変を察したのか。
逃げようと暴れだした。
「やだやだ! 絶対嬉しいことじゃないじゃん!」
「大丈夫。お姉ちゃん落ち着いて」
「お、お母さん。少しの間抑えつけてもらえますか?」
「なんだかよくわからないけど、面白そうだから乗っかるわっ」
「お母さぁ〜ん。一馬くぅ〜ん」
お母さんに抑えられ、動けなくなった芽愛ちゃんが甘えた声で名前を呼んでくるが無視し。
「じゃあ私からいくね。……お姉ちゃんは未だに寝るとき、ぬいぐるみを抱いて寝てる!」
「へっ? なんで知ってるの!?」
ぬいぐるみを抱きながら寝る芽愛ちゃん……。
かわいいな。
「ふふふっいい反応。次は三山さんの番ですよ」
「そうだな……」
恥ずかしがることか。
「少し前、デートしたんだけど急に雨が降ってきて」
「ダメダメダメ! それ以上はダメ!」
芽愛ちゃんはお母さんの手を力尽くで振りほどき、俺を押し倒して口元を抑えてきた。
顔は見たことないくらい真っ赤。
「私の負けですね」
侑愛さんの顔はどこか嬉しそうだった。
全然悔しがってないから、やっぱりただ恥ずかしがる顔を見たかっただけじゃん。
せっかく海の別荘に誘われたんだし。
こんな勝負なんてしてないで、普段見ることのない景色を見ながらゆったりしたいな。
「……芽愛ちゃん。まだ離れないの?」
「うるさいっ」
あの勝負が終わった後、なぜか芽愛ちゃんが俺の腕に抱きついて離れようとしない。
少し不機嫌になってるから、機嫌治すことしないとな……。
「一馬くん。海行こうよ」
俺にだけキツくあたる彼女と別れたら甘えたがりになって帰ってきた でずな @Dezuna
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