第6話 覚悟
時刻は21時。
最近は健康的な生活をしているおかげなのか、自然とあくびが出てくる。
夜ごはんの弁当を食べた俺たちは、彼女ではなく付き合う前のように二人で対戦ゲームをして遊んでいた。
再会したときみたいに、一緒にいて苦しいとはもう思わなくなっている。それも、芽愛ちゃんの印象がガラリと変わったからだ。
そんな芽愛ちゃんは今、お風呂。
ちなみに俺はもう先に入ったので、ポカポカな状態のままベットで横になっている。
このまま寝たいところだが、今日俺は下の座布団を重ねて寝るつもりなのでそうはいかない。
「はぁ」
俺たち、この先どうなるんだろう。
芽愛ちゃんはどうしたいんだろう?
「わかんねぇ〜」
まだ元カノだっていうのを利用して、金品を盗むっていう可能性があったり……。
いや、その線はないか。
俺が今日大学に行ってたとき、どうやら芽愛ちゃんは俺の家の掃除をしてくれてたっぽいし。
脱ぎ捨てられてた服を全部洗濯してくれてたっぽいし。
「ん?」
というか冷静に考えて、元カノってこんなことしてくれないよな?
泣いてまで俺の家に来て謝って来て、家事をやってくれて、その日は元カレの家に泊まる。
うん。付き合ってたときキツく当たってきた理由はわからなかったけど。
なんとなく言いたいことがわかる。
多分これ、復縁したいってことだろ。
自意識過剰?
だとしても、もしそうだったら俺は。
「また付き合えたらいいな……」
一度失敗した俺の願望は、秒針の音に掻き消された。
▶▶▶芽愛視点
「ふぅ」
自分のことを誤魔化すように頭とか体を洗い、ようやく湯船の中で一息つけた。
このお風呂は私の家のお風呂より狭い。けど一馬くんの家だから、ずっといたくなるような惹きつけられるものがある。
「一馬くんが入ったあとのお湯……」
って、いけないいけない。
こんなこと考えてたら、お風呂から上がったあとまともに顔を見られなくなる。
私は絶対に今夜、一馬くんの心を堕とす。
そのためならなんでもするつもりだけど……。
入ったあとのお湯であたふたしてる私に、果たしてできるのかな。
ちょっと不安になってきた。
「頑張れ頑張れ」
私ならできるはず。そう、だって一馬くんに向ける気持ちは誰にも負けないはずだから。
付き合ってたときは私が自分勝手な態度を取っていたせいで別れてしまった。けどだからこそ、一馬くんが求めてるものが少しわかった気がする。
何がどうしてこうなり、私が泊まりに来てるのか。
こういうのはまず色々話すべきなんだけど。
不安に思わせてしまうかもしれないけど。
数日間泣き続け、溜まりに溜まった一馬くんへの強い思いをコントロールするなんてことできない。
難しいことはあとでいい。
身勝手だけど、今は全部ぶつけたい。甘えたい。
「よし」
私は覚悟を決め、秘めた想いを胸にお風呂から上がった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます