第15話 俺たちのペース
「だーかーら。この前も言ったけどお菓子ばっかり買っちゃだめでしょ。今は今夜の買い出しに来てるんだしさ」
「ごめんごめん。つい癖で」
「一馬くん。今度一緒にダイエットしようね」
「ぐっ。太ったのバレてたのか……」
とりあえず太ってしまったのはおいといて。
俺と芽愛ちゃんは今、スーパーに来ている。
今夜二人っきりでパーティーををする予定になっていて、その買い出しだ。
ちなみになんでパーティーするのかは……俺もわからない。
芽愛ちゃんが「二人で一緒にいたい」と突然言ってきて。流れでこうなった。
「あーと。一馬くんってアレルギーとかなかったよね?」
「ないよ」
「なら私セレクションで色々買ぉーっと。あ、今回の買い出しで買うものは全部私が払うから」
芽愛ちゃんにスッとポケットから財布を取り上げられてしまった。
「ふふっ。じゃあついてきて」
鼻を高くしてるのを見るに。
前々から奢りたくて仕方なかったんだろうな。
ここは手に持っている財布を奪い返すなんてことせず、おとなしくしておこう。
「きゅうりって野菜として全然栄養ないけど、なぜか定期的に食べたくなるんだよね」
カートにある2つのカゴはすでに山盛りにだ。
最初はパーティー用のピザや肉をカゴに入れていたが、今はなぜか俺用の食材をカゴに入れている。
というか、1つのカゴ丸々俺用らしい。
「芽愛ちゃん? も、もうやめない?」
「たしかに。そろそろ二人で持って帰るのが大変になっちゃいそうだし、やめよっか。……まだ色々欲しい物があったけど、これでもいいや」
「欲しい物?」
「一馬くんの家に行ってなにか作ろうかと思ったとき、欲しい物がなかったら嫌じゃん? そゆこと」
つまり芽愛ちゃんは定期的に俺の家に来て、手料理を振る舞ってくれるってことか。
またあの美味しい手料理を食べられるのは嬉しいんだけど……。
さられっぱなしって言うのは申し訳ない。
俺もなにかすることあるかな?
「っ」
考えながら歩いていると、さっき歩道でされたように右腕にギュッと抱きついてきた。
「あらあらあらぁ〜」
「若いっていいわね」
「青春だわ〜」
すれ違う主婦全員に温かい視線を向けられてる。
歩道のときもそうだったけど、芽愛ちゃんってこういうこといきなりしてくる人じゃなかったから毎回心臓が飛び上がる。
「えっと」
腕に抱きついてきてる芽愛ちゃんに目を向けると。
無言で抱きつく力を強めてきた。
「手料理食べてね?」
「……もちろん」
芽愛ちゃんには俺が考えていること、お見通しだったみたいだ。
「感想ちょうだいね?」
「もちろん」
「ずっと一緒にいてね?」
「もちろん!」
声を大にして答えると、芽愛ちゃんの顔が真っ赤になって照れてしまい。
周りの視線を集めていたが、俺たちはそんなこと気にせず会計し。
浮足立つ絶妙な空気のまま、パーティー会場である俺の家に向かった。
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