道具屋と赤の国①-3

 セキの仕事部屋の前。

 セキは緊張した面持ちでドアノブに手を当てる。

「セキさん。どうしたんですか?」

 ココが質問する。

「いやな。鬼がいないか、気配の確認だな」

『鬼が苦手なのか?』

「鬼は鬼でも……」

「セキ。なにしているんですか?」

 扉が開き、作り笑顔のトシが立っていた。

「あっ、いたんですね」

「います。ユウジさんの報告がありましたので」

「へー。そいつは計算外だ。まさか、監視していたなんて」

(さっき、見張りとかなんとか言ってたよな)

 セキがわざとらしく話していたので、見張りの存在は本当は認知しているのだと魔王は思った。

「それで、今までサボってなにしてたんですか」

「強いて言えば、デート?」

 悪意ゼロの表情でセキは答えた。

「ほう。では、いつ仕事をするのですか?」

「さあ」

「どうやら、頭吹っ飛ばされたいようですね?」

「こら、お客さんいるんだから、物騒な話しは後だ。ほれ、武器に手をかけない」

「確かに、エマさんと、お隣の方は?」

「ココちゃんだ。トシの武器を手配してくれた子だ」

「あ、ココです」

 ココは緊張しながら、一礼する。

「そうでしたか、これは失礼しました。このバカがいつもお世話になってます」

 トシが笑顔を見せ、ココを安心させようとした。

「バカ! 失礼ですがセキさんは国王様ですよね?」

「ええ、国始まって以来のバカ国王ですね」

「セキさん。それでいいんですか!」

「えっ、そっか、マズイか? いや、マズイのか?」

「マズイですよ!」

 トシが突っ込む。

「もう、いいです。後で説教しますので、とりあえず、客人をもてなして下さい」

 トシが諦めた。

「おう、言われなくても!」

 セキは部屋の中を案内する。

「エマ、いいの? こんなんで?」

 ココは小言でエマに質問した。

「いつものことなんで。それよりも名物の鬼のお仕置きが見れないのが残念ですが」

「なにを名物にしてるんですか!」

 ココはつい大声を上げてしまい、急いで口を塞ぎ苦笑いを浮かべた。


 仕事部屋。

(随分と整頓されている)

 ココが思っている以上にキレイな室内である。

 トシが片付けている感じがした。

「さっ、奥に進んで」

 セキはその間にお菓子と飲み物を用意する。

「さあ、好きなの選んで」

 色んな種類の飲み物が一瞬で用意された

「なんで、準備万端なんですか?」

 ココが疑問を口にした。

 流石のエマも驚いていたが、目を輝かせ、何種類か選んでいる。

「だって、好きなの選べるように事前に準備していた方が、色んな女性に対応できるでしょう?」

「いちいち、突っ込まない方が賢明ですよ。彼は究極の女性好きですから」

 トシが言う。

(そりゃそうだな。話しが進まなくなるな)

 魔王も頷く。

(しかし、アイツのことだから、俺様を追い出すとか、なにかするかと思ったら、すんなり俺様を通したな)

 魔王は隙間から見える部屋の中を見ていた。

「そっ、そうなんですね。あはは」

 ココもこれ以上は突っ込まず、飲み物を選んだ。


 10分後。

 ココ達は席に着いた。

「さて、話しだったな」

 セキはココを見る。

「あ、あのー。戦争は、青の国とは戦争するんですか?」

「結論言っちゃえば避けられないだろうね。向こうさんがやる気満々だから」

 セキは目を細め話す。

「ど、どうするんですか?」

「そうだな。燃やすか。青の国全土を」

「セキ。その冗談は笑えませんので、止めて下さい」

 トシが苦言を呈する。

「まあ、そうだな。ココちゃん。大丈夫やらないから」

 セキは笑って誤魔化すも、ココは目が点になっている。

「で、できるんですか?」

「まあ、その気になれば、青の国だけでなく、この世界全部可能だけど」

 顔は笑っていたが、目はマジであった。

「でも、そんなことしたら、ココちゃんだけでなく、他の女性に嫌われるからやらないけどね」

「セキはこれの方が本気なので、そう思っていた方がいいですよ」

 トシが付け加える。

「まあ、そんな、得体が知れない化物に喧嘩吹っ掛けたのは、アオヤだからな。そりゃ、買うでしょう。そっちの方が手っ取り早く分からせられる訳だし、俺は平和主義者だが、置かれている状況が分からない程、愚かではないんだよ。国民を守る義務は最低限遂行しなきゃならないだろう。俺からしたら、それだけの話しだ」

「それだけですか……」

「そうだよ」

「では、何万、何十万の軍勢はどうするつもりなの?」

「トシ。どうするのが、最善策か?」

「そうですね。攻めてくるのでしたら、骨も残らず焼いてもも構いませんよ」

「さっき、俺に言ったこと、そっくり返すぞ。お前も物騒だよ」

「確かに。できれば、最小限に投降させて下さい。彼らにも家族はいますので」

「だな。と、言うことだ。悪いようにはしないよ。約束する」

「セキさん」

「うーん。そんな俺が信用できない?」

「そんなことはないのですが……。現実的ではないと言いますか」

「確かに、なる程。そう言えば、そうだな。よし、湿っぽい話しはこれで終わりだ。狩りに行くか」

「狩りですか?」

 ココが目を丸くした。

「ああ、俺の力見せてやるよ」

「え、大丈夫ですか?」

「大丈夫でしょう。俺も守るが、いざとなったら、魔王が守るだろうし、ココちゃん。行くかい?」

「い、行きます!」

「分かった」

「ココ。私は待っているわ」

「そう?」

「うん。すぐ終わるから、ここで待ってるよ。セキさんから借りたら本を読んでます。いいですか?」

 エマは目を輝かせ、本を取り出す。

「いいよ」

 セキが頷く。

「終わるの!」

 ココは驚く。

「終わるかな。今日は10分くらいかな。数いらないし」

「10分。いや、見つけるのにもそのくらいかかりますよ!」

「それは、まあ、そうだけど、俺は違うから。今、証明するよ。んじゃ、行ってくるわ」

 セキは扉を出現させ、鍵を取り出す。

「これは……」

「これも神様からの貰い物だよ。トシ。エマちゃん頼むよ」

「はい。分かりました」

「それじゃ」

 セキとココは扉の向こう側へ向かった。

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