道具屋に通うお客様④-2

「アイテムボックスか、私も、もういくつか欲しいな」

『まだ、欲しいのか!』

「はい。そうすれば、いくつかカテゴリーごとに入れられるでしょう?」

『アイテムオタクが。しかし、ソウゴを見てもなにも思わないのか?』

「なにって、何がですか?」

『野郎として、異性としてなにも思わなかったのか? 年頃の娘だろう』

「ええ、別に。そう言うの、あまり、興味ないんですよね。それよりも、アイテムを手入れしている方が好きなんです」

『正真正銘のアイテムオタクだな』

「まあ、でも、確かにセキさんとは、違ったイケメンではありますよね。それだけですが」

『あっそう』

「逆に魔王さんが、そう言った話しに興味があるのは、意外です」

『人間の平均的な感性を知るのも、立派な侵略の一歩なんだよ』

「へー」

 ココは空返事をする。

「でも、侵略して、どうするんですか?」

『そりゃ、秘密だ。一介の道具屋のお前には言えない』

「実は無計画だったりして、魔王だから、侵略します。って、なんて言うか本能的に動くと言うか」

『余計な詮索するな!』

「案外、図星だったのかも。でも、私はただの道具屋ですから、阻止しませんよ」

『勇者に垂れ流すことしないのか?』

「情報屋でしたら、言いますけど、情報を勇者に伝えるなんて、道具屋にとって言えば、決められた役割ではないでしょう? だから、言わないです」

『役割か、まあ、深淵踏み込み、取り返しのつかない状況になる話は、よくあるからな。お前の考えは間違ってはいないだろうよ』

「ですよね。魔王さんも、魔王としての仕事をしている。それでいいかと思っています」

『お前、意外と達観しているんだな』

「毎日、色んな人を見ているので。危ないことも結構あるんですよ。ああ、でも、最近はなにかに守られているように、危ないことが少なくなっているな。魔王さんなにかしてます?」

『何故、俺様になる』

「天下の魔王が近くにいるんですよ。加護みたいなものでしょう?」

『俺じゃない。加護。加護ね』

 魔王は気になって、ココのステータスを確認する。

(炎王の加護……。アイツかよ!)

〈加護の内容:害虫が現れたら、俺が燃やすから、ヨロ〉

(ヨロじゃねーから! 加護の内容砕け過ぎだろう! あと、お前は神じゃねーだろう!)

 神様のように普通に加護が付与できる、国王って、可笑しな話しであった。

(ああ、でも、勇者にチートアイテム渡していたか)

「どうしましたか? 魔王さん」

『いや、なんでもない。お前さんはしばらくは、安泰だよ』

「そうなんですか?」

『ああ、少なくとも、お前さんがここで、道具屋をやっていられる内はな』

「そうですか、なんだか分からないけど良かった」

 ココは微笑む。

(まあ、アイツが道具屋の笑顔を守る為、とか、なら、少し分かるかもな)

 魔王は炎王の加護の続きを読んでいた。

〈但し、俺は神様ではないので、見える範囲まで、彼女の笑顔を守る為に付与〉

 魔王はココの笑顔を見て思うのであった。

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