道具屋とマジックアイテム③-2

 それから、2週間後。

 セキは道具屋に足を運んだ。

「セキさん。いらっしゃいませ」

「どうも。頼んだ物できたんだって?」

「はい。こちらになります」

 ココは銃を出す。

 セキはそれを持ち出し、構える。

 少し様になっている。

「おお、いい感じじゃないか」

「こんなんでいいですか? これでは、セキさんが望む不殺の武器ではないですよ?」

「いいんだよ。あとは、こっちで改良するから、そもそも、俺の友人の癖とか分からないだろう?」

「はい……」

「だから、これでいいんだ。ありがとう。これ、報酬ね」

 セキは大量の金貨を出し、ココに渡した。

「ありがとうございます!」

「それより、どうした? できたから、すぐ来て欲しいなんて言ってさ。ココちゃんの頼みなら、すぐに来たのに」

「セキさん。お願いがあります」

「うん。なに?」

「赤の国の王様に謁見したいです! あのー、こんなの、セキさんにしか頼めなくって、紹介状とか、書いてくださる方を紹介して下さい!」

(紹介もなにも、目の前にいるからな!)

 魔王はセキの反応を見る。

 涼しい顔をして、余裕だった。

「いいけど、ココちゃんなら、大歓迎だ!」

「ありがとうございます!」

「でも、急にどうしたんだ?」

「それは……」

「まあ、言いたくなかったらいいけど、紹介状もいらないよ」

「そうですか?」

「ああ、なんたって、ココちゃんの頼みだからね。聞かない訳にはいかないよ。大丈夫。俺に任せて」

「ありがとうございます!」

「そんな改まらなくていいよ。それで、いつ来るんだい? 案内したいからね」

「来週とかどうですよ?」

「大歓迎! 待ってるよ」

 セキは微笑む。

『ココ』

「何ですか? 珍しく私の名前を呼んで」

『そこのバカと話がしたいんだ。抜けていいか?』

「構いませんよ。セキさん。いいですか?」

「いいよ」

『んじゃあ、俺様を持って表出ろ』

「はいはい。ココちゃん。借りるよ」

「はーい」

 セキは水晶玉を持って店を出た。


「んで、話しってなんだ?」

『んの前に俺様を投げるな!』

 セキは上に水晶玉をボールのように投げて、キャッチしていた。

「嫌か、仕方ないな」

 セキは舌打ちして、水晶玉に羽を付け、セキの目線に合わせる。

「んで、なんだ? 俺は帰って銃を改良したいんだが?」

 セキはタバコに火を点ける。

『ココに手を出すんじゃねーぞ』

「なんだよ。今更。ってか、最初に手を出したのはそっちだろう?」

『まあ、そうなんだが、今は違う。契約があるからな』

「情が沸いたからとか、恋愛感情とかないのかよ?」

『恋愛感情とかねーよ! あんな天然。俺様の配下にいるサキュバスの方が魅力的だ。あちぃ』

 魔王の言葉にセキはどこからか炎を出し、水晶玉を炙る。

『俺様が悪かった許してくれ』

「いいが、今度、サキュバスを紹介しろ」

 セキは炎を消した。

(性欲魔人が、魅了されて、人生終われ)

 魔王は思った。

「それで、俺がココちゃんに手を出すって、なんでそう思うんだ?」

『戦争だよ。青の国とこれからドンパチやるって時に国王が、敵国に道楽でやって来て、道具屋に行ってさ。物流混乱させるとか、そんなこと考えてないのか?』

「まさか、ココちゃんは、確かに信用できる子だし、注文の品を素早く的確に用意するから、太いパイプがあるとは思うけど、彼女はただの道具屋だ。戦況を左右する程の力はないよ」

『じゃあ、何故、彼女に近付く。どう考えても、彼女が危険だ』

「理由が必要か?」

『用心棒として、必要だ』

「そうだな。強いて言うなら、彼女がこの国で一番可愛い道具屋だったから」

『真面目に答えろ!』

「割りとマジで言ったんだがな。あとは、そうだな。彼女は俺のことをあまり詮索しないからかな。彼女、俺が持ってきたアイテムを出どころを疑わずに鑑定と換金をするだろう」

『そもそも、お前の国で鑑定すればいいだろう?』

「初めはそうしていたんだが、ランクが高いアイテムだと、俺の国じゃ、買い取り出来ても、流すところないんだよ。そう考えると、物流が発達している青の国に売った方がいいだろう? それでも買い取りできないレアなお宝はハクちゃんに売るけど、そんなアイテムの方が遥かに少ない。それなら、太いパイプがある道具屋を探す。んの、中で、俺の身分に対してあまり興味のない人がいい。可愛い子なら尚更いい」

『それで、ココなのか?』

「そうだよ。彼女は俺の条件にピッタリだろう?」

『否定はしない。だから、加護まで付けたのか?』

「そうだよ。もっとも、1番の厄介人はお前だったけどな。まさか、魔王が釣れるとはな」

『俺様は魚じゃねーからな!』

「だが、この世界の最凶が釣れたのは、俺的にはラッキーだと思っているんだが? こうやって、監視すれば、少なくとも、勇者は安全だからな」

『お前、本当にバカなんだよな?』

「頭は悪いな。ただ、それ以上に感は働く、これも感だよ」

 セキは嘲笑う。

『お前……。やっぱ。バカなんだな』

 魔王はセキの顔を見て貶す。

「うるせぇよ。燃やすぞ! ともかく、俺はココを戦争に利用するとか、考えてないから」

『それなら良かった。俺様はお前が敵に回ったらココを守れないからな』

「そうだな」

『それで、本当に戦争するのか?』

「それはだな……」

 セキが話しかけたが、声がした。

「魔王さん。お仕事です」

 ココが魔王を呼びに来たのだ。

 セキは急いで、魔王に着いている羽を消し、手で受け止めタバコを炎を出して処分した。

「あ、セキさん。お話し中すみません」

「いや、いいんだ。もう、終わるところだったから」

 セキは笑顔で答える。

「そうでしたか」

「ああ、返すよ」

 ココに水晶玉を渡す。

『おい、俺様の質問は?』

「今度、赤の国に来るんだ。その時でも遅くはないよ」

 セキは笑う。

「んじゃ、ココちゃん。今度は赤の国かな?」

「はい」

「楽しみにしてるよ」

 セキはそのまま歩き去った。


「赤の国か……」

『どうした?』

「緊張してきました。国王様に会うの」

 ココはあたふたし出す。

『緊張するだけ無駄だから、早く鑑定の仕事するぞ!』

 魔王は力一杯叫んだ。

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