道具屋とマジックアイテム③-1
ある日、セキは真面目な顔でココに話して来た。
「ココちゃん。道具屋として俺の頼み聞いてくれない?」
「なんですか?」
「ある武器を探すか、誰かに作って欲しいんだ」
「どんなです?」
「人を殺さない武器だな」
「不殺の武器ですか?」
「ああ」
「セキさんが使うのですか?」
「いや、俺じゃなくて、友人に渡すんだ」
「ご友人さん?」
「そう。銃の扱いには長けた男なんだが、どうにも、目的の為なら、殺人なんて、お構い無しの、俺よりある意味ヤバい奴でな」
「セキさんより、ヤバい人? セキさんは普通の冒険者ですよね?」
(普通じゃないから、特にコイツは)
魔王は、怯えている。
「うーん。まあ、そうかな。でもさ、持って来る鑑定品を見て普通の奴とは思ってないだろう?」
「まあ」
「ココちゃんは、俺を信じて鑑定してくれているけど、他じゃそうもいかないのは分かっているんだ。だから、今回の話しの詳細もお金の出所もあまり話せない。だから、ココちゃんにしか相談できないんだ。大丈夫。お金はちゃんと、準備するから」
「まあ、お金を用意して頂けるのでしたら、いいですよ」
「ありがとう! ココちゃん!! ココちゃんと友達になれて良かった」
「ありがとうございます。では、武器の詳細を伺ってもいいですか?」
「勿論だ」
セキはココに武器の構想を話し出す。
ココはそれを纏めていた。
一時間後。
「ありがとうございました」
セキは店を出た。
『お前さん。いつまで、あの男と付き合うんだ?』
「いつまでって、友達止めるまでですが? どうしたんですか? いつもは、常連客さんには、悪態つくのに、セキさんには黙って」
『そりゃアイツはな』
怖い。なんて、口が裂けても言えない。
魔王のプライドが許せなかった。
「どうしたんですか? 途中で話を止めて」
『そうだ。お前さん。前にアイツから、自分の正体について話してなかったのか?』
「話してましたよ。赤の国の国王ですって、まさか、そんな訳ないじゃないですか、ドラコン倒す猛者ですよ」
(アイツは嘘を言ってなかった!)
魔王はセキが嘘をついていたのかと、最近は疑っていたが、どうやら、ココに問題があったようだ。
『そ、そうか。ま、まあ、今度、赤の国に行くからな。その時、真偽が分かるか』
セキから前金の代わりに、2泊食事付き宿泊券を貰っていた。
「そんな驚くべきことあるかな? まあ、エマの予定を聞いてから出発になるけど」
『僧侶の仕事忙しいのか?』
「うん。なかなか、忙しいって、もうしばらくすると、予定が空くって言ってたな。と、言うか、スライムさんにちゃんと休むように言われたとか」
『親友は仕事好きなのか?』
「と、言うより、好きなことしているから、公私混同で休んだつもりでいるのかと。だから、スライムさんが心配したんじゃないかって思います」
『そりゃ、心配にもなるか』
「でも、それが普通ですよね? 私も大量仕入がある日と、用事がある日以外は、毎日お店を開いていますし」
『そっか』
「魔王さんだって、毎日働いているでしょう? 私の店で鑑定して」
『まあ、お前さんが店を開けていたら、そうなるか』
「だから、普通でしょう?」
『そうかも知れないが、余暇や休息も大事にしろって、言いたいんだよ。恐らく親友の近くにいるスライムも』
「なる程、魔王さんは、休息したいんですか?」
『まあ、毎日、同じことの繰り返しになっているからな。たまには、違う世界と見たいことは見たいな』
「なる程、赤の国は気分転換になるのか」
『まあな』
(国王不在なら、もっといいんだがな)
あの国王は案内すると言って去って行ったのを思い出し、魔王は身体を震わせる。
「確かに、修羅の国と呼ばれて言われても、アイテムは気になりますね」
『修羅の国かは微妙だぞ』
「それに……」
『それに、どうした?』
「アオシ国王が失脚されそうで、関係が悪くなっている話しも聞いているので、行くなら早目の方がいいから」
『そっか、戦争が始まったら、親友にも会えなくなるからな』
「はい。だから、その前にってところもあります」
『なる程な』
「魔王さんは赤の国と戦争が始まったら、どうなると思いますか?」
『他国の戦争のことに興味ない。だが、どちらの王を知っている立場からしたら、実力差が有りすぎるからな』
「そうですよね。青の国が勝つに……」
『逆だ。赤の国の圧勝』
「そんなはずは……」
『事実だ。これは、単純な軍事力ではなく、王の力だ。悔しいが俺様は赤の王には勝てない。出来て手傷を負わせた程度だ。まあ、そんな傷もアイツからしたら、一瞬で回復するがな。アイツがその気になれば、この世界の人類を滅ぼすって抜かしている。恐らくあれは嘘ではない。バカだが、メリットのない嘘は言わない奴だからな』
(お前さんに本当のことを話したのも、嘘がデメリットだと思ったのだろうな)
心の中で補足した。
「そんな人が……」
『勇者だって言っていただろう。俺様の討伐ができるのに、やらないと。あれも真実だからな。俺様は強大な力を持っていても、それでも、この世界の理にいるが、アイツは理から外れた存在。たかが人間が頭数揃えたところで、太刀打ちできない。敗因はそこだよ。アオシはそこを理解していたから、領土を奪おうとしないんだ。それ以上の被害が国として致命傷だと分かっていたからな。だが、今は違う。次期国王は愚か者だってことだな』
「アオシ国王は、国民にそれを隠していたんですか?」
『そうだ。多分、都合がよかったんだろう。どちらも国民を危険な目に合わせない為だな。だが、今、その均衡が破られようとしている。赤の国を侵略するって、そう言うことなんだよ』
「そんな。どうしよう」
『一介の道具屋がどうにかなるもんじゃないだろう。精々武器や回復アイテムを国に献上する。文字通りの道具屋になるしかないな』
「そんなの嫌です!」
『嫌だって言われてもな』
「私、赤の国に行きます! エマも心配だし。国王に謁見もします!」
『おいおい、お前さんは道具屋だろう。それを超えたことはしないんじゃないのか?』
「戦争をする為の道具屋ではありません。冒険者の旅を助ける道具屋です! だから、赤の国と戦争とか反対です。もし、魔王さんの言う通りの王なら、赤の国の王を説得した方が早いです!」
『そうなるのかな?』
「魔王さん。私を守ってくれる約束しましたよね?」
『まあ……』
魔王は嫌な予感がした。
「赤の王に襲われたら、契約通り守って下さい」
『話し聞いてたか!』
返り討ちに合うのが関の山だ。
(まあ、別の意味で守ってやるかな)
ココの決意に満ちた目を見て感じるのだった。
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