道具屋に通うお客様②

 ココのお店は評判がいい。

 品揃えもいいし、質もいい。なにより、ココがいい子なのだ。

 なので、色んなお客様が常連客として通っている。

 今日は青の国元トップクラスの実力者がいた。

「え、サイジョウさんも、赤の国にいるんですか!」

「はい。実は。報告忘れてましたが、少し前から、そっちで働いています」

(一体、赤の国で、なにが起こっているんだろう)

「でも、サイジョウさんは、強くなりたいから、青の国にいたんですよね?」

「ええ」

「でしたら、何故、赤の国へ? ああ、すみません。興味本位で聞いてしまいました」

「いいですよ。実は赤の国の王と賭けをしたんです」

「どんな?」

「赤の国の王の要求は、青の国の王に勝てたら、引き抜くです」

「無謀な賭けをしましたね」

「今にして思えば、果たして無謀だったのか、不思議なんですよね」

「赤の王は勝算があったと?」

「ええ、実際、今、赤の国で俺が働いていますので」

「まあ、確かに。それで、どんな卑怯な手段で賭けをしたんですか?」

「卑怯な手段? いえいえ、それは違います。正々堂々、実力勝負をしていますよ。寧ろ、巫女の力を使わない分、ハンデは赤の王にありましたね」

「そんなに強いんですか?」

「ええ、俺が手も足も出ない程、一度、手合わせをお願いしたことがありまして、その時に実力差があるのを実感しました」

「急に現れて、そんな人が、でも、青の国には、赤の王が強い話出てませんよね?」

「それも、赤の王の考えで、あえて表立つことはしたくなかったみたいです。本人はとても目立つ方ですが、弱小国を守って貰う為に、あえてです」

「青の国を隠れ蓑に?」

「そうです。まあ、実力差を広めたところで、赤の国にメリットがあまりないのもありますかね。それより、お金を借りたり、流通環境を良くしたりとか、そう言ったことに重点を置く方がメリットあるみたいで、公表しない代わりに、馬車の便増大とか、無利子の借金とか、色々、難題を提示しました」

「ゆすってます?」

「公に出来ませんが、周りからしたら、そうです」

「そんなことまで! うーん。やっぱ、どんな人か気になる」

「そうですね。今、ココさんが思っている人ではないかと、バカなのか、うつけなのか、切れ者なのか、とにかく、一筋縄ではいかない人ですね」

「そうなんですか……」

「あ、ココさん。このナイフ下さい」

「はい」

 サイジョウは買い物でココのお店にいた。

「回復薬はどうしますか?」

「今回は大丈夫です。最近、あまり、重傷者が出なくなったので、これも、王の効果なんですよね。王の周りのレベルが上がっている。勿論、俺も」

「分かりました」

「おい、サイジョウ!」

 会計を済ませた後、サイジョウを呼んで、男が入って来た。

「アオシ国王様!」

 入って来たのは青の国の王、アオシだ。

 ココは驚き、つい、名前を叫んでしまった。

「今日はあのバカと一緒じゃないのか?」

「ええ、別行動です。どうしましたか?」

「書類だよ。バカが国内にいるなら、アイツに渡した方がいいだろう?」

「まあ、確かに」

「いないなら、サイジョウでいいか。バカに渡しておいてくれないか?」

「ええ、構いませんよ」

「それと、お前にも忠告するが、国内であまり、派手なことするなよ。お前はまだ信用できるが、あのバカは信用ならないからな」

「畏まりました」

 サイジョウはアオシから、書類を受け取る。

「確かに渡したからな。あのバカに締め切りまでにやっとけと伝えてくれ」

「分かりました」

 アオシが店を出ようとする前に足が止まる。

 そして、ココを睨む。

「今のことは、他言無用な。君はなにも見ていない。いいな」

「あ、はい」

「もし、くだらない。詮索するようなら、国王権限で働けなくするから」

「わ、分かりました」

 本当にできるので、ココは従うしかできない。

 アオシ国王は嵐のように去って行った。

「では、俺もこれで。アオシ国王に言われたことは、おまり気にしなくていいですよ。もし、これで、不利益を被った場合は赤の王に言いますので」

「はあ、分かりました」

 サイジョウも店を出る。

「一体、赤の王って、どんな、人なんだろう」

 ココは不思議に思っていたが、それが分かるのは、やはり、少し先の話。

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