道具屋と赤の国①-2

 カフェの中。

「さあ、好きなのどうぞ」

「私は本日のオススメケーキ」

 エマが早速選ぶ。

「はいよ。ココちゃんは?」

「全部美味しそう……」

 ココは目が点になりながらもメニューを見る。

「だろう。自慢のお店だよ」

「それは、気になる」

『適当に頼めばいいだろう。あっちぃ! 燃やすな!』

 水晶玉が燃えていた。

「お前、ココちゃんにいつもそうやって接しているのか!」

『悪いか。俺様はお前と違って、女をもてなし、野郎を暴力で従わせたり区別しねーんだ』

「セキさん。あ、国王様。私は大丈夫ですから、水晶玉に傷が付くので止めて下さい」

「そっか?」

 セキは火を消した。

「って、水晶玉が焦げてない」

 ココが確認した。

「そりゃ、炎は只のエフェクトみたいな物で、実際は口の悪い魔王の精神を燃やしているだけだからね。コイツが俺の能力の一部だよ」

「そう言えば国王様って」

「今まで通りでセキでいいよ」

「そうですか? セキさんって、力弱いんでしたよね?」

「そこは、弱く見せているつーか、検知されにくいつーか、力が放出しない方が普通だからな。それで、青の国じゃ、バレていないんだが」

『お前、それが可笑しいんだよ。神が作ったであろう物に抵抗できるんだからな』

「神ねぇ」

 セキは含みのある言葉で、魔王に反応した。

「セキさん。この、パフェいいですか?」

 ココはメニューを指差し、話しを割って入る。

「お安いご用だよ」

 セキは全員分の注文をした。

「それで、セキさん」

「なんだい?」

「本当に国王様なんですよね?」

「まあな。新米の一時的な感じだけどな」

「紹介状いらないのって」

「俺が俺に書くの可笑しいじゃん」

『どうでもいい質問する為にここに来た訳じゃないだろう』

「そうでした。城とかでお話したいのですが」

「城なんかないよ。復興中だからな。予定はあるけど、着手は大分後回しだな。まあ、あって、なんかするもんでもないし。そのくらいでいいんだよ」

「でも、シンボルって必要ですよ」

「シンボルってのは、国の象徴って、ことだろう? それなら、今は俺がいるから、いらないじゃん」

『目立ちたがり屋の、ナルシストだな』

「五月蝿いな。まあ、ナルシストなのは認めるがな。ってか、そうでなければやってられないよ」

『けっ、精神ぶっ壊して死ね』

「既に再起不能になったから、ここにいるんだよ」

「そう言えば、魔王さんより歳上でしたよね?」

「魔王の年齢は知らねが、300年以上は生きているかな。具体的な年齢は忘れたけど」

「本当ですか!」

「今更嘘ついてどうするよ。俺の力は大きく4つ。1つは、こいつを燃やす炎や羽を出すことが出来る。2つその炎は精神を燃やすこともできる。魔王が苦しんだのはそれだな。3つ生命の力。見ての通りこの地が緑豊かになった力。そして、最後4つ目不老不死の肉体だ」

(本当にチートだな)

 それを簡単に話す辺り、力に自信があるのだと、魔王は感じた。

「老いない。死なない力……」

「そう。長生きの理由だな。俺は元々人だった。まあ、それが運がいいのか悪いのか力を手に入れてな。まあ、なんやかんやでここにいるんだ」

『お前、人だったのかよ!』

「そうだよ。ってか、なんだと思ってたんだよ」

『悪魔の化身』

「だから、お前が言うと格下に思えるんだが?」

『格下だろう? 人だったら尚更』

「ココちゃん。悪いことは言わない。ココちゃんにもっといい鑑定士兼用心棒ができたらコイツはすぐに解雇した方がいい」

「やっぱ、そうですよね?」

「ああ」

『なんだよ。それ! どうしてそうなる!』

「分からないなら、気にするな。無駄だから」

『んだと!』

 魔王が怒りをあらわにしたが、それは到着した料理で消された。

「お待たせしました。日替わりケーキです」

「私です」

「サンドイッチセットはセキさんですね」

「ありがとう」

 セキはサンドイッチセットを受け取る。

「そして、特選パフェです」

 ココの目の前に大きなパフェが置かれた。

『お前、これ、全部食うのか?』

「だって、気になって」

 ココは目が点になって答える。

「食べられなかったら俺が食べるから好きに食べな」

「はい」

 ココは早速食べる。

「お、美味しい!」

「ココちゃんの口に合ってよかったよ」

 セキは笑顔で答えた。

「でも、青の国ではこんな店ないですよね?」

「まあ、そうだな。俺の世界の料理だからな」

『異世界人は本当だったんだな』

「それについても、嘘ついてもしょうがないからな」

「セキさん。異世界にも魔法のアイテムはありますか?」

「魔法自体が俺の世界にはないな。俺が特殊なんだ。まあ、でも、文明は俺の世界の方が段違いに上かな」

「例えばなにがあるんですか?」

「そうだな。エマちゃんには既にユウジを介して渡しているよな」

「あ、あの本ですか!」

 エマは目を輝かせる。

「そう」

 セキは空間に歪みを発生させ、手を入れる。

「セキさん。この力は?」

「ん? これか? 貰い物の力だよ」

『け、加護かよ。ココ。コイツの力にいちいち突っ込んでたら、進まないから後にしろ』

「はい」

 セキは本を取り出し、ココに渡す。

「この本は?」

 ココはページをめくる。

「こ、これは」

「俺の世界にある建造物だ。これを設計する技術力は凄いだろう? 本当にあるんだぜ」

「はい。この製本技術も凄いです」

「だろう。そして、そもそも、その写真だ。綺麗だろう?」

「確かに」

「こんな技術が俺の世界の特徴だな」

「セキさん」

「なんだい?」

「欲しいです!」

「いいよ」

『いや、ダメだろう』

 軽いノリでセキが了承するので、魔王が止める。

「いや、だって、既に俺の国では普通に売っているからな。カメラ。俺の世界の技術はいくらか白の国に提供しているし、その代わり、安く仕入れているかな」

『既に技術提供してたわ。いや、理とかさ』

「魔王が理説くなよ。大体、俺がここにいる段階で、理もなにもないだろう」

『そうだった』

「なんで、青の国にはないんですか」

「なんでって」

 セキの顔が曇る。

『ココよ。なにを聞きに赤の国にわざわざ足を運んだんだ』

「そうでした。セキさん!」

「そうだったな。目的があったな。この話しは俺の仕事部屋でやろうか。エマちゃんも付き添ってくれるかい? もし、嫌ならユウジ呼ぶよ」

「はい。大丈夫です! ユウジさん。お暇なんですか?」

「俺の見張りしている程度には」

「でも、今日は大丈夫です」

「そうか。んじゃ、食べ終わったら、移動しようか」

 セキはココに促すのだった。

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