道具屋とマジックアイテム②-1

 ココは月刊勇者雑誌を読んでいる。

「やっぱ、勇者装備のアイテムが欲しいな」

『頼めばいいじゃねーか?』

「誰にです?」

『赤の国の王』

「出来ませんよ。そんな、得体の知れない人になんか。ドラコンも魔王さんもワンパンする人になんか。怖いですよ」

(恐れられているぞ。ざまあねーな。って、俺様が雑魚扱いになってる)

 ココにとって、天下の魔王は恐怖の対象では、最早ないらしい。

(これはこれで屈辱)

 普段から、無能力者ムーブ出しているセキと、魔王は違う。

 力こそすべてな魔王にとって、プライドが許せない話しであった。

『でも、赤の国には友人いるんだろう? 心配じゃないのか?』

「心配ですよ。たまに手紙が届くのですが、新しい友達が出来たみたいで、しかもスライムの」

『スライムだと! あの。ブヨブヨのゼリー状の下級魔物の?』

「はい。その認識で間違いないかと。ただ、意志疎通が出来るみたいで、文面の感じ魔王さんみたいかと。水に魔力を注いでスライムの形にしているとか。恐らく便宜上スライムと言っているだけですね」

『つまり、誰かが、操っているのか?』

「はい。その誰かさんには、まだ、エマは会っていないようですが、とても、素敵な方のようですよ」

『へー。ソイツはスライムなんだし、移動できるのか?』

「多分、物も運べるようですので」

(つまり、俺の上位互換じゃねーか!)

 魔王は続けざまに、二度目も屈辱を味わった。

「でも、魔王さんみたいにアイテム鑑定はできないので、私は魔王さんの方が必要ですよ」

『そ、そっか』

 アイテム鑑定としてしか、ココは言っていないが、名誉は守られたようで、魔王は、少し気分がよくなった。

「でも、魔王さんみたいな力を持って、姿も現さない方と友達になって、心配ですよ」

『まあ、スライムなんて、殆ど攻撃力はないから、そもそも無害なんじゃないのか?』

「そうでしょうか? ううん。行きたいよーな。行きたくないよーな」

 ココが困っていると、白猫が窓から入ってきた。

「白猫だ。可愛い」

『そっか?』

「魔王さんは黙ってて下さい。あれ、でも、首輪がある。飼い主さんいるのかな?」

『さあな。って、その首輪呪いのアイテムだぞ』

「嘘! なんでそんなことを」

『知らねーよ』

「魔王さんは呪いを解くことは?」

『さあな』

「魔王さんも万能ではないのですね」

『解呪くらいできるわ!』

 ココの挑発に魔王はつい乗ってしまった。

「じゃあ、やりましょうよ」

『なんで、俺様がそんなことしなきゃならないんだ』

「猫ちゃんが可哀想だからです!」

『関係ない』

「割りますよ」

 ココは低い声で脅す。

『わ、分かった。解くよ。捕まえて連れて来い』

「私まで呪いの効果が」

『それは、大丈夫だよ。首輪を装備しなければな』

「分かりました。では、捕まえます」

 白猫は軽い身のこなしで避ける。

「ちょっと、逃げないで」

 ココは追いかける。

『まあ、その内、疲れて諦めるだろう』

 魔王は少し遅い昼寝に入った。


 30分後。

『まだ、やっているのかよ』

 魔王が呟く。

「あ、魔王さん。そっちに行きました。捕まえて下さい!」

 ココが叫ぶ。

『おい、俺様にそんな力はねーよ!』

 白猫が魔王の前までやって来る。

 水晶玉を割る勢いがあった。

『仕方ない。解呪!』

 魔王は寸前のところで、呪いを解く呪文を唱える。

 すると、装備していた首輪は外れ、みるみる人の姿に変わっていった。

 猫耳の気品がある女性である。

『マジかよ』

 魔王は苦々しい反応をする。

「ハク様?」

 ココは驚いている。

『そうだな』

 白猫の正体は白の国の女王であった。

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