第21話 忍者なのか何なのか

 現在、私は柔道を子供に教えたりもしている

町道場と言うものではなく、私立の高校の柔道部とその顧問が小中生、社会人にも門戸を解放して柔道教室を行っている

そこで私は柔道部顧問の手伝いだ


もうやめてしまった指導者に、Zさんがいる。指導者の期間では、私と少ししかダブっていない

Zさんは30代後半ではあったが、184センチ85キロ位か、だらしなく太ってはいない。見事に均整の取れた体格、名選手の風格だった

しかし私と初めて会った頃には、膝を痛めていると言って、ろくに柔道はできておらず、準備体操だけだった

そしてある時、子供たちと柔道をしたいから膝を手術すると言い出した

どうやら手術をした

そして復帰はしたが、なかなか膝は治らない

それでも子供たちの試合でZさんは審判として貢献していた

審判をするという事は、それなりのライセンスを取得・登録が必要で、試合があれば1日拘束されてしまう。私はいまだにそこには足を踏み入れてない。時間を取られるのが嫌だ。申し訳ないが情熱が不足している

なので、Zさんは尊敬に値していた


Zさんは、子供たちに厳しかった。「友達がやっている試合をちゃんと見ろ」これは当たり前のことだ。しかし「水分補給、水筒の水を飲むときに、審判の方を向いて飲むな」隠れて飲めと言うのかな、それは私はあまり聞いたことのない作法だった。

そんなことをしているうちに、Zさんが仕事で軽自動車を運転していたら、後ろから突っ込まれて首を痛めたと言う

首の神経をやられて、足の感覚がなくて、ギリギリ歩けてると


 結局、私はZさんが柔道しているところを1度も見たことがない。1度ぐらいお手合わせをしたかったかな


ちょっとしたトラブルから、Zさんはこの道場を辞めた

他の道場にも関係していることを指摘され、ばつが悪くなったようだ


私はてっきり、Zさんはこの私立高校の柔道部のOBだと思っていた

しかし古株の人に聞くとそうではなかった。では、一体どこで柔道やってたのか

また古株の人に聞くと、「社会人で始めたんじゃないのかなあ」と言っていた。社会人になってからって、この道場だって、そんなに年数が経ってない

ちなみにですが

柔道の立ち技は、数年ではなかなか会得できない。何せ、相手と自分が3D位置関係で、スピードと加速、力、運動の方向、選択肢と展開が多すぎる

寝技は相手の位置の把握が立ち技より確実なので、やればやるほど強くなり易く上達が早い。習い事としては非常に良いと思う。だから、ブラジリアン柔術が栄えて当然だ

極論だが、立ち技はやればやるほど強くなると言い切れない部分もある。才能とかの条件の影響が強い


Zさんは、おじさんの歳になってから数年しか柔道をやってなかった人だったのかな


Zさんから聞いたことがある「N先生には乱取りでどうしても勝てない」悔しがっていた

N先生とはこの高校柔道部の顧問だが、今考えると当たり前だ。おっさんが甘々な環境下で数年やって、才能があって大学までもみっちりやった柔道部顧問に勝てるわけがない


何を悔しがっていたんだ


不思議なおじさんだ


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