第25話 執念の勝負師
コロナ前、私が手伝っていた柔道教室に行くと、歳をめされた男性が柔道着を着ていた
街のスーパーに貼った勧誘を見たらしい
小柄だが、体がしっかりしている印象。初老と言うよりもう少し上、70代前半。それでいて筋肉質
柔道教室の主体である高校柔道部の監督に聞いたところ、中華料理屋のオヤジらしい
ご隠居か?
それにしても、こんなところに来て怪我したらどうする気か
余程の好き者だな
私も道着に着替え、社会人を含めた小中学生達といつものように練習を進めた
そして乱取り、立技の勝負となった
オヤジは子供相手だとまあまあ出来ている
あの歳でよくやるよ
そして、私のところにもお願いしますときた
そうきたら乱取りの相手をしてやらないといけない
様子を見てやるか
右手でオヤジのえりを持つ
力が強い
そこであまり経験したことのない状況となる。えりを持たれたオヤジが私の右手首を自分の左腕の硬い部分でロックしてきた
右手が自由に動かせない。痛くて動かせない
一瞬、あせった
でも、ばればれだ。ロックして相手を逃げられなくしてから一本背負いで投げようという魂胆だ
それにはのらない。フットワークで散らすとそれ以上できないもよう
派手な技で投げるのは可哀想だから足技で転がした。直線的には力が強いが、ひねりには弱い
いい運動だったし、それなりの勝負もできて、お互い満足だったのではないか
帰りに柔道部の監督に聞いた
あのオヤジが腕をロックしてきやがったから手首が少し痛いよ。あれはどういう人なの?
なんとも言えない表情で答えてくれた
あの人は、別の団体で柔道をしていたんだけど、乱取りの後、相手の中学生に後ろからキックして、出入り禁止になったんだ
それで、うちに来た
何があったか知らないが、熱い
とんでもないオヤジだが、少し悲しい
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