第18話 切ない近所のお兄さん

 近所に2つ上のお兄さん的な子が住んでいて、よく遊んでもらっていた

サッカーとか野球を一緒にやったはずだが、そういったことが上手だったと言う記憶は全くない

だが、お兄さんは変に器用だった

まず、花火をほぐして、火薬を取り出した

直径20ミリ位のボルトをナットの半分ぐらいまで回して入れ、ナツトの中に火薬を詰めて逆からまたボルトをちょっと回して蓋をする

火薬を閉じ込めた状態だ

火薬に圧力がかかるか、かからないかというところまで締め込むという部分が難しい作業だった

そんな爆弾を作っていた

 そして真上に投げて着地すると爆発する。それを楽しんだ

そんな危険な遊びを小学3年生程度がやっていた

そしてある時、いつものように火薬を詰め、逆側からボルト締めしている最中に、お兄さんの手の中で爆発した

そりゃそうだ。いつかはそうなる

かなりの打撃を手の指に負ったんだと思う。お兄さんは、家に帰っていった

悲しい


また、私が小学校低学年の頃のある日、近所の小学生と一緒に、そのお兄さんと子供だけで凧揚げに向かった

ちょっと郊外、新幹線の北側に広がる冬の田んぼがあり、何かに使うであろう荒れた広い更地もあって、絶好の凧揚げをする場所だった

凧は上がったが、あまり高く上がらず、横に横にしか上がらなかった。きっと糸を付けている角度が悪かったのだろう

 そこで私は気がついた。凧が新幹線のほうに近づきすぎている

凧を操っていたお兄さんが理解していたかどうかがわからなかったが、私にはよく見えていた

新幹線が迫ってきている

新幹線とぶつかりそうだ

更に、新幹線が迫ってきていた

今から考えると、とんでもないことだ

今だったら全国ニュースに載ってしまう

ぶつかる


凧は新幹線とは当たりはしなかったが、新幹線とニアミスし、なぜかバラバラになってひらひらと落ちていった。そして運良く凧は回収できた

衝撃波なのか風圧か、新幹線に近づくということは、バラバラになる。そういうことなんだなぁと子供ながら理解した

 運が良かったのは凧を回収できたということだけではなかった。当時は気にしていなかったが、新幹線とぶつかるという以外に、高圧線と接触しそうだったのだ。その辺の電柱につながっている数百ボルトとは違う数万ボルトの電圧のかかった電流が流れていた。そこに凧が接触したらどういうことになったのか

凧糸に乗って電流がお兄さんのところまで来るのか、途中で放電して地面に流れるかは分からないが、どえらいことになっていたはずだ

運がよかった

当時の運転手は、このことを上に報告したのだろうか?今となってはわからない


その後、そのお兄さんは、大人になり、ハード寄りな生活をしているような噂を耳にした

幸あれ


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る