第14話 奇行
仕事をしているフロアの男子トイレで詰まりが発生した。
個室の方でだ
私はこのフロアで仕事をするのは数年前からだが、その期間でも3回位このようなことがあった。管理の担当者に聞くと、テニスボール大のトイレットペーパーが詰まってたそうだ。以前の数回もそうだったみたいで、これは何かのメッセージなのか
この事件を度々引き起こしている男を私は" テニスボールの王子様"と心の中で呼んでいる。また、それを略して、" テニスの王子様 "とも呼んでいる場合も多い
これは某人気漫画のタイトルと似ているようですが、それは偶然である。
私が仕事してるこのフロワーの男達は200人近くいる。ほぼデスクワークで、体を動かしても軽作業。準エリートの様な顔をして、おかしなことをする奴がこのフロアにいるということになる・・・
疑心暗鬼
この行動の裏には何かあるのか、会社への不満からこのような破壊工作を起こしているのか、もしくは独特の癖が無意識に出てきてしまっているのか・・・窺い知れない
おかしな行動でも、何かしら原因はある。これは今までの経験からはっきり言える
小学校時代のK下君はカッターの刃をなめるのを周りに見せて、たまに舌に切り傷を負ったりしていた。原因というか理由がある。目立ちたいだけだ。人となりを一概にこれだと決めつけるのは不遜でしかないが、こいつは目立ちたいだけで決まりだ。
ドラマの中で日本刀をなめた財津一郎。映画の中でナイフを舐めた佐藤浩一。日常生活の中でカッターの刃を舐めたK下君、日本三大刃物を舐めた男達だ
うちの会社の "テニスの王子様" の愚行が何を示すかは今だに不明なので一旦置いておいて
次は、奇行とも言える謎の話
うちの近所、人があまり通らない奥まったところに美容院らしきものがある
自宅兼美容院の昭和っぽい建物だ
何年も前から営業はしておらず、だんだん看板も朽ちてきていた
しかしある時、看板が綺麗に塗られて新品の様になっていた。しかし美容院は再開されない
これは小説で言うと、アシモフの「黒後家蜘蛛の会」で出るような話。きっと給仕のヘンリーが解いてくれそうな謎である
しかし、ヘンリーの謎解きを待たずして、私はこの真相の半分を知っている
私の近所の話だからである
この家のおばさんが美容院を切り盛りしていたのだが、10年位前に車にはねられ、遠くの病院に入院していた。意識が無いと言う話を聞いたことがある。だから、美容院は営業できなかったのだ
最近の病院は長い入院をさせてくれないのだが、何か特殊なところにずっといたらしい。旦那さんも80才近かったので、旦那さんでは介護はできないレベルだったと思う
そして、そのおばさんは10年近い入院生活の末、病院で亡くなった
不運な話だ
そして、あの美容院の看板が綺麗になった
町内の集まりで、その旦那さんと居合わせたことがあるが、看板を直した理由はとても聞けなかった
もう髪をセットする人間は誰もいない
熱いものは感じる
私の憶測でしかないが
魂の帰郷が迷わぬようにか・・・、それとも幸せな時期を忘れない為、もしかすると、なんらかの約束があって、それを果たしたのかもしれない
80才を超えたあの旦那さんのやりたいようにすればいい。私は何もしてやれないが、心の中では応援している
これは奇行ではないな
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