第15話 どうにもならない趣向

 偉そうなことを言っている私だが、他人から見れば理解できない行動も多い

 私は物を取っておく癖がある。ただゴミを分別して捨てたい気質もあるのでゴミ屋敷の主にはならない。この一線は大きい


 何年か前、近くでフリーマーケットが毎週のように開催されていた。バイク兼自転車屋の廃業で、段ボール箱にそれらしいものが詰まったものが売られていた。箱の中が見られない状態での出品ではあったが、私は2箱を買った。

これによって、おびただしい数のスパークプラグとわけのわからないライトのレンズ。バイクのフード2つが私の財産に足された。自転車の部品もいっぱいある。活用するものはほんの一部しかないだろう

それでも、何も捨てる物は無い。1つ1つが確実に役割を持っているものだからだ

この捨てないという愚行はそれが出来る環境があってこそだ。私の場合、小屋の所有がそれを可能にしている

 3m四方のログハウスを庭に持っている。これは都会でマンションに暮らす人たちとは違った田舎ならではの醍醐味であろう。

これが妙な収集癖の温床となり、癖が順調に育っている

 天井近くには2つの琴がぶら下がっている( 注: 琴は本来、1面、2面と数える)

どちらも新品ではない。リサイクルショップで買ったものだ

琴は2m近くあるので、普通なら場所をとってしょうがないのだが、私にはこのスペースがあるので平気なのだ

当初のイメージでは琴を改造してギターにしようという計画を持っていた。しかし実際に琴を見てみると、木組としての出来が良い

おまけに前の持ち主の名前が書いてあったりする。きっとどこかのおばあさんが大切に使っていたのであろう

私はそんな琴を切り刻んで改造する気にならなくなった。だからずっとこのままで置いてある。しかし、全くの無用の長物かと言うと、そうでもない

琴の下面には2つの穴が開いており、その1つにスマホを入れて音楽を聴くと、増幅した音が響いて自然のステレオスピーカーとなる。将来的には小型スピーカーを組み込み、いにしえから伝わる魅惑の音を作り上げても良い

ここまで書くとわかると思いますが、風流の一歩手前が一番危険。ガラクタ地獄につながる


そして私は床屋さんの椅子に座って、琴から出てくる音を聞いている。椅子はリサイクルショップで購入したもので、ネットで調べるとマッコウダンディーという名の椅子だった。これもきっと理解されない所蔵品だろう



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る