第10話 ステータスを得た少年

「まさか本当にこんなゲームみたいな事が起きるなんて……」


 杉戸は目の前に浮かぶステータス画面を見て目をパチクリさせた。


 脳内に響いた声に従ってステータスと口にした結果だった。頭上に浮かんだ半透明のウィンドウには杉戸のステータスが表示されていた。


ステータス

名前 今中 杉戸

レベル1

戦闘力20

気力40

魔導力30

魔力25


スキル

・ナビ・飼育・好感度表示

称号

・虫好き


「虫好きって……いや確かにそうだけど」


 自分のステータスに苦笑する杉戸であった。

 それにしてもまさかステータスを得られるなんて、一体どうして? と考えたが理由はあの蝙蝠しかない。


 どうやらあの蝙蝠はただの蝙蝠ではなかったようだ。


 それはそれとしてスキルの内容に興味が湧く。


「このナビというのは一体何だろう?」


――ステータスについて基本的な事はナビによって説明されます。


「え! 声が頭に――もしかしてこれがナビ?」


――そのとおりです。


 頭に響く声に杉戸はポカーンとした顔で暫く立ち尽くした。しかし我に返った後様々な質問をしてみる。


 それでわかったのはステータスは予想通り現在の自分の能力を示したものであり、ステータスを得た事で魔力や気力を扱うことが可能になったということであった。


「魔力なんて実際にあったんだ……」


――正確には似たような物を魔力に変換している形です。


 似たような物が何か杉戸には良くわからなかったがとにかくゲームのようなものと認識する事にした。


 その上で残りのスキルについても確認してみたその結果――


スキル

・飼育

好感度七十以上の相手を飼育しペットに出来る。

ペットにステータスがない場合は新たにステータスが付与される。

ペットには命令が可能。

ペットが得た経験値の一部が主人に入る。

・好感度表示

見た相手の好感度が表示される。好感度は最低が0で最大が100。


 という物だった。飼育の説明は長いなと思いつつもその効果には興味が湧く。


「あ、カブトムシの好感度が視えるよ。しかも90もある!」


 捕まえたばかりのカブトムシの好感度が高いことを杉戸は喜んだ。虫好きとしては昆虫に好かれるのは本望なのだろう。


――好感度が条件を超えています。このカブトムシは飼育可能です。飼育しますか?


 そのとき杉戸の脳内にアナウンスが流れた。どうやら捕まえたカブトムシは飼育対象に出来るようだった。


「そ、そっか飼育すればステータスが――」


 杉戸は自分のようなステータスがカブトムシにもつくのか、と不思議に思い折角だから試してみたいという気持ちが強まった。


「よし! 僕は君を飼育するよ!」


――カブトムシを飼育しました。名前をつけますか?


 更にナビから質問を受けた。


「名前はあったほうがいいよね。それならカブト! それが君の名前だ」


――カブトをペットにしました。ステータスは主人すぎと側からも確認可能です。


 頭の中に響くアナウンス。杉戸はペットとしたカブトのステータスも確認した。


名前 カブト

レベル1

戦闘力50

気力70

魔導力20

魔力20

スキル

・突撃・装甲強化

称号

・杉戸のペット


「ステータスが僕より高い……」


 カブトは見た目には普通のカブトムシなのだが確かにステータス上では全体的には杉戸よりも高かった。


 一応魔導力と魔力は杉戸の方が高いが戦闘力と気力に関しては大きく差がついていた。


 本来なら幾らまだ子どもとは言えカブトムシの方が強いなんてことはないだろうがこれもステータスの影響か、と考える。


「頼もしいね。これからよろしくねカブト」

 

 そして改めてカブトと挨拶した杉戸。色々と不思議なことがあったわけだが、ふとカブトが虫かごから飛び出した。

 

 何度か落ちてしまった為蓋が緩んでいたのだろう。しまったと手を伸ばす杉戸だがカブトは大きく離れることはなくある地点でくるくる旋回するように飛行を続けた。


「びっくりした。逃げたわけじゃないんだね。でも、ここになにかあるの?」


 そう呟きつつ杉戸がカブトの近くに行くと飛び回っているカブトの下に何かが落ちているのを発見した。


「これって石?」


 それは半透明な綺麗な石であった。まるで宝石のように輝いていてどことなく神秘的である。


「そっかこれの事を教えてくれたんだね。ありがとうカブト」


 杉戸がお礼を言うとカブトが杉戸の肩の上に止まった。そこからは杉戸に顔を向けたりしつつ大人しくしている。


「はは、カブト賢いなぁ。これだけ懐いてくれてるなら虫かごもいらないかもね」


 杉戸はカブトの頭をなでながら嬉しそうに言った。ふと空を見ると茜色に染まりつつあることに気がついた。


 いい時間だなと思い杉戸はそのままカブトと一緒に家路に着くのだった――

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