第12話 戦利品の買い取り先
「こっちは金貨にそれに金の鉱石。高級そうな宝飾が施されたナイフか――飛斗。お前の知り合い何かヤバいことやってるわけじゃねぇだろうな? 盗品なんて洒落にならねぇぞ」
俺が見せた戦利品をマジマジと見た後、役爺が聞いてきた。ギロリと鋭い視線が俺を捉えてくる。
この眼力、向こうにいた四天王すら霞む程だ。しかしヤバいこと扱いか。どうやら危険な物じゃないか確認されてるようだ。
やっぱりいきなりこんなもの見せても怪しまれるか。とは言えこれは別に役爺が言ってるような盗品とかではないしな。
「それは大丈夫です。盗んだ物なんかじゃなくて、その……俺の知り合いがトレジャーハンターやっててそれで手に入れた物なんです」
俺は思いついた内容で説明した。トレジャーハンターと言うのは俺たちの世界でいう冒険者みたいなものだ。
以前ネットでもそういった職業の人が動画配信しているのを見たことがある。ダンジョン探索もまぁ似たようなものだし嘘はついてないな。知り合いではなくて拾ってきたのが実は俺自身って事以外は。
「トレジャーハンター? ふむ……」
役爺は机をトントンっと指で叩き、俺が持ってきた品と俺の顔を交互に見た。
怪しまれたかな? と不安でもあったが――
「ま、お前がそんな危ない橋渡るとも思えないしな。だが訳あり品ではあるんだろう?」
再び厳しい視線が突き刺さる。この顔の役爺には下手なごまかしはしないほうがいいな。
「はい。訳はあります」
「だろうな。まぁいいわかった。ただしうちで扱うわけにはいかねぇからその手の専門の業者を呼ぶ。買い取りはそいつにしてもらうがいいか?」
何か買い取って貰う前提の話になったが、ここまでしてもらってやっぱり無理ともいえないしな。
「わかりましたそれでお願いします」
「ならちょっと連絡とってみるか」
早速店長がスマホを取り出してどこかへ電話を掛けた。
「――おう久しぶりだな。実はちょっと買い取りを頼みたいんだがどこかで立ち寄れるか? うん? なんだ近いな。わかったそれなら伝えておく」
そして役爺が通話を終え俺に顔を向け口を開く。
「近くで仕事してるらしくてな。午後いちで来てくれるんだそうだ。ま、それまでに昼を済ませておくんだな」
対応が早いなと感心しつつ、店長にお礼を言って俺は仕事に戻った。来店するお客も増えてきたので午前中は忙しく過ごしつつ業者が来るのを待ったわけだが――
◇◆◇
ステータスを得た次の日、杉戸は飼育ゲージに入れたカブトに餌を与え頭を撫で大人しくしておくよう伝えた。
元々虫が好きな杉戸だがステータスを得た上、スキルによってペットに出来た事でより愛着が湧いた。
「ママ学校行ってくるけどカブトには注意してね」
「わかってるわよ。それにしてもカブトムシなんてよく見つかったわね」
「へへ。結構苦労したからね」
笑顔で母の疑問に答える杉戸。なんとなく母の頭上を見ると好感度が100とあった。
――好感度が条件を超えています。この母親は飼育可能です。飼育しますか?
「いやしないよ!」
杉戸は思わず叫んでいた。母の好感度がマックスなのは嬉しいが流石に飼育するわけにはいかない。
「どうしたのよ突然?」
「あ、いやなんでもないよ。行ってきます!」
杉戸はその場はごまかして急いで家を出た。全くとため息をつく。
スキルが手に入ったのは嬉しいが好感度の表示などは慣れていく必要があるだろう。
家を出てからはそのまま学校に向かった。
「でも確かに大変だったなぁ」
道々カブトを捕まえた時のことを杉戸は思い出していた。あの蝙蝠との戦闘もだ。
大変な戦いだった。正直運が良かったのもある。そうでなければ怪我はもっとヒドイ事になっていただろう。命さえも失っていた可能性がある。
ステータスを得たことで怪我は回復したので親にはこれといった説明はしていない。
まさか蝙蝠に襲われて返り討ちにしたらステータスが手に入ったなどと言うわけにもいかないからだ。
もっとも言ったところで信じてくれないだろうな、とも考えていたが。
「おう杉戸。昨日はよくもやってくれたな」
学校につき教室に入ると
柔剛は杉戸と年齢こそ一緒だがガッチリとした小学生離れした体格をしていた。身長も百八十センチ以上あり小学六年生の身ではかなりの高身長である。
杉戸は百五十センチであり平均よりも低めである為、巨人のごとく大きさに感じていることだろう。
「別に僕は何もしてないけど……」
「うるせぇ。大人の手を借りやがって」
「本当に卑怯な奴ですよね!」
いつの間にか威張も会話に加わり杉戸を責めて来た。早く教室に入りたいが二人に絡まれ困ったことになった杉戸である。
ちなみに頭上に表示された好感度は柔剛が10で出歯口が5であった。見事に低い。
「ちょっとそんなところで邪魔じゃない」
杉戸が二人の対処にこまっていると快活な女の子の声が割って入った。
見るとおかっぱ調の髪型をした
久美子は杉戸が柔剛にちょっかいを受けているとこうしてよく声を掛けてきた。
クラスでも数少ない杉戸の味方の一人だったのだ。
「う、うっせぇな! 俺はこいつと話してるんだよ!」
「そんなの後にしなよ。ほら杉戸もホームルーム始まっちゃうよ」
柔剛と出歯口を無視して久美子は杉戸の手を取って教室に入った。
杉戸はちょっぴり照れくさそうにしていたがおかげで二人からは逃れることが出来た――
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます