第40話 悪党には躾が必要?

「その、なんだこの鞭は叩いた相手が言うことを聞くようになる鞭なようだ」


 俺はとりあえず杉戸に鞭を手渡しながら簡単に効果を説明した。あまり深いところに興味を持たないでくれよ。小学生が知るには早すぎる話だからな。


「この鞭で叩くと……ということは!」


 杉戸がハッとしたような顔を見せて鞭を持って邦夫の前に立った。かと思えば――


「エイッ! エイッ!」

 

 何と杉戸が邦夫相手に鞭を振り始めた。意外と鞭を扱うのが上手いな。いや、そういうことじゃない気もするが。


「おいおい杉戸何してるんだよ?」

「うん? だってこのまま放ってはおけないでしょう? この鞭で言うこと聞いてくれるならそれが一番だよ」

「ま、まぁ確かにそうかもだが――」

 

 杉戸の意図は理解できた。だが絵面的に正しいのかが疑問だ。


「い、いてぇえぇ! な、何してやがるテメェ!」


 杉戸に鞭で打たれたことで邦夫が目を覚ましてしまった。ヤバい意外と目覚めるのが早いぞ!


「このガキがぶっ殺――」

「エイッ! エイッ!」

「いて! てめぇ、いてぇといってんだろうが! いい加減に!」

「エイッ! エイッ!」

「ひやぅ! ま、まてこら、ちょ、やめ――」

「エイッ! エイッ! エイッ! エイッ! エイッ! エイ――」

「おお! すげぇぜ杉戸! 何かよくわからないけど大人の階段を上ったって気がするぜ!」


 柔剛が興奮気味に語るが、こんなことで大人の階段を上るのはどうかと思うぞ。


「エイッ! エイッ!」

「あ、ああ、や、やめ、はぁ、はぁ、ちょ、これ、くしぇに――」


 杉戸が一心不乱に邦夫を鞭で打ち続けた。すると次第に邦夫の顔が恍惚した物に変わっていく。そして俺はいま一体何を見せられてるんだ。


 それから更に十分以上経っただろうか。その頃には邦夫の様子も一変する。


「ワン! 俺は貴方の下僕だワン!」

「えっと……」


 邦夫が杉戸に鞭で打たれ続けた結果がこれだった。邦夫は杉戸に忠誠を誓う従順な犬に変わってしまったのである。自分で何言ってるかよくわからないがそういうことだ。


「すげぇな杉戸! あんな凶暴な奴をここまで変えるなんて!」

「いや、この鞭のおかげとは思うんだけど――好感度が200とかいってるんだけど……」


 杉戸が言った。杉戸は相手の好感度がわかるスキルを持ってるようだ。


「200とかすげぇな!」

「最大は100の筈なんだけどね」

 

 興奮する柔剛相手に苦笑気味に杉戸が答えた。それも鞭の効果が上乗せされたと見るべきか。


「ご主人様。この下僕にどうぞ命令を!」

「えっと、それなら警察に行って自首して欲しいんだけど……」

「お望みとあれば! 今すぐ警察にいき罪を告白じてきますよ!」 

 

 邦夫が鼻息を荒くさせた。それはそれで手間が省けていいのだが今はダンジョン内だ。勿論こいつがとんでもない奴なのは確かだが一人で向かわせるわけにもいかないだろうな。


「この後どうしましょう?」


 杉戸が俺の判断を煽った。この状況で成人しているのは俺だからそうなるか。


「とりあえずはこのダンジョンを何とかしないとな。奥まで行ってダンジョンコアを見つけないといけないんだが――」

 

 そこまでいってから三人を見た。流石にこのまま連れて行くわけにはいかないか。だが出口がどこにあるかはわからず一番手っ取り早いのはダンジョンコアを処理することなんだよな。


「僕たちのことは心配しないでください!」

「そうだぜ。ステータスもあるし戦えるからな!」

「ビ~!」

「ご主人様は俺が守って見せる!」


 三人と一匹が俺についてくる意思を示した。全員自信がついているようだな。確かに全員にステータスやスキルはあるがこの奥までとなると心配はある。ただ邦夫がついてくるのは利用できるかもな。俺にとっては大した相手ではなかったがそれなりに戦える強さはあるからな。


 少し迷ったが下手に出口を探したり別行動取らせるよりは一緒に奥へ向かったほうがいいかもな。


「……わかった。だが此処から先は危険だからな。俺の後ろから慎重についてきてくれ」

「はい!」

「わかったぜ!」

「ビ~!」

「ご主人様俺がしっかりついてますからね!」


 俺は三人と一匹にそう言ってから先に向かった。ダンジョンコアさえ俺が取り込んでしまえばこのダンジョンは消え去るからな。そうすれば無事に外に出られるはずだ――

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