第30話 カマキリとの死闘
「すげぇ! 俺にゲームみたいなステータスが見えるぞ!」
柔剛が興奮気味に口にしていた。杉戸に飼育されることとなり柔剛にステータスが与えられたのだ。
勿論その代わり今の柔剛は杉戸のペット扱いとなる。とは言えこれで化け物と戦える力は身についた。
柔剛のステータスは杉戸からも見ることが出来た。念のため確認する。
ステータス
名前 大門 柔剛
レベル1
戦闘力60
気力60
魔導力5
魔力5
スキル
・柔術の心得・返し投げ・投げ強化・絞めの呪縛・受け身
称号
・柔の道を行く者・杉戸のペット
柔剛は見た目通りのステータスと言えた。魔導力や魔力は極端に低いが戦闘力はカブトよりも高くなっている。気力はカブトの方が勝っているがそれでも十分と言えるだろう。
何より際立つのはスキルの多さだ。カブトや杉戸がステータスを得たときよりも多い。どれも柔道関係が多いのも特徴的だった。
「柔剛君凄いよ。あと僕のレベルも上がってる」
柔剛を飼育したことで杉戸に経験値が入ったのだろう。これにより杉戸のステータスも強化された。
ステータス
名前 今中 杉戸
レベル2
戦闘力25
気力50
魔導力35
魔力30
スキル
・ナビ・飼育・好感度表示・攻撃指示・守備指示
称号
・虫好き・虫の使い手・飼育者
スキルが追加されたのは大きいと言えた。攻撃指示は戦闘力を上げるが変わりにダメージに対して脆くなる。守備指示は逆にダメージに対して強くなるが戦闘力が低くなる。
「おいカマキリ野郎が来たぞ。これで勝てるのか?」
「いや。ステータスは得たけどそれだけで勝てるわけではないと思う」
杉戸が答えると柔剛がギョッとした顔を見せた。
「ちょっと待て。だったらどうするんだ?」
「基本は逃げないとだめだ。だけど追い詰められているから普通には逃げられない。だから作戦だ。僕は新しく覚えた攻撃指示のスキルで皆の戦闘力を上げる。ダメージは受けやすくなるけどどっちにしろあの鎌で切られたら一発で死ぬ」
「マジかよ……」
真剣な表情で語る杉戸に柔剛が顔を歪めた。
「でも大丈夫! 僕がそんなことさせない。でもこれには柔剛の強化された身体能力とカブトのすばしっこさが大事となるんだけど……僕を信じて動いてくれる?」
杉戸が柔剛に確認した。すでにカマキリはすぐそこまで迫っていた。
「当たり前だ。杉戸は虫にも詳しいからな。頼りにしてるぜ」
「ギィ!」
柔剛が腕まくりしカブトも力強く鳴いた。ここで杉戸の心も決まった。
「ギギッ――」
そしていよいよカマキリの化け物が姿を見せた。柔剛は柔道の構えを見せながら迎え撃つ姿勢でありその頭上にはカブトが控えている。
「こいつ、鎌はどの程度振れるんだ?」
「普通のカマキリは突き出す程度だけど、そいつは見る限り前肢の関節が柔らかい。水平にも振ってくると思うから僕が指示するまで範囲には絶対に踏み込まないで」
杉戸の言うようにカマキリは鎌の部分を時折横に寝かせたりしながら威嚇していた。釜の部分はかなり柔らかそうである。
「だけど見たところ足は変わらない。カマキリは前後の動きは早いけど旋回は苦手なんだ。柔剛君とカブトで相手を中心に旋回しながら撹乱して!」
「わかったぜ!」
「ギィ!」
杉戸の言う通り柔剛とカブトが動いた。一方で杉戸は壁にぴったりと張り付くようにしてできるだけ動かないようにした。カマキリは複眼を有し物を立体的に見れることでとても目がいいと思われるがしかしそれは相手の動きに反応してのことだ。
故に杉戸は壁際で目立たないようにジッとしていることにした。これによりカマキリは自然と動き回る柔剛とカブトに意識が向く。
勿論杉戸はただ自分が生き残りたいからそうしているわけではない。カブトと柔剛がカマキリの隙をつく一瞬を見逃さないためにそうしている。
カブトが空中を飛び回っているとカマキリが自然とそちらを向く。カブトは羽音を鳴らしながら飛び回っている。カマキリは耳もいいためにカブトの動きと音に反応してしまうのだろう。
「これは――いける!」
その時だった柔剛がカマキリの後ろからダッシュで近づき組み付いた。
「背中を取ったぞ! このまま!」
「駄目だすぐに離れて!」
杉戸が叫んだ。それを聞いた柔剛が反射的に離れるとカマキリの首がぐるんっと回転し柔剛がいたであろう場所に喰い付いた。
「ま、マジかよ……」
柔剛の顔が青ざめる。杉戸の指示がなければ今頃柔剛の首から上は酷いことになっていたことだろう――
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