(二)-14

 その日の夜、輝彦は帰宅していつも通り、ダイニングの席についた。子どもを寝かしつけた妻の美沙恵が現れたので、「ビール」と輝彦は言った。

 美沙恵の方もいつも通りに「冷蔵庫にあるわ」と返してきた。

 輝彦はため息をつきながら立ち上がって冷蔵庫の方へ歩みを始めると、いつも通りではないことを美沙恵は言い始めた。

「ねぇ、もっと稼いでこれないの?」

 たかが会社員で月の給与は決まっている。残業時間数だけ金額は変わるが、自営業ではないし、株式投資で上手く相場の上昇気流に乗って売買を成功させたりしているわけではない。稼ごうと思ったって、その金額を大きく変えることなどできるわけがない。


(続く)

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る