(二)-12
エレベーターを降りてオフィスに入って出社すると、鞄を自分のデスクに置く間もなく、輝彦は上司の番田部長に呼ばれた。
輝彦はすぐに部長のところに向かい、デスクの前に立った。
すると「ネクタイが曲がっている」「寝癖が付いている」「ズボンに折り目がついていない」などと、ネチネチとした嫌味がたっぷり盛られた細かい注意の、大音声の連続攻撃を出社早々に受けた。
頭の先から足の先までのチェックと口撃の後、番田部長は「行くぞ」とデスクを離れ、オフィスの出口に向かった。
輝彦は思わず「どこへ?」と聞いてしまった。
「バカを言うな。客先に決まっているだろう」
(続く)
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