(二)-13
普段から破廉恥なほどに身勝手で自分のことしか考えていない番田部長が自分を連れてどこかへ行こうとするとは、輝彦は分子レベルの物質一個ほども思っていなかったのだった。だから思わずそう口走ってしまったのであった。まさかトイレに行くのに部下を連れ立っては行かないだろうし。
結局、イリヤスビューティのオフィスでは、一時間以上も入谷社長に怒鳴られっぱなしで帰ってきた。しかも前回輝彦が謝罪に行ったときよりも怒気が強かったし、おまけにお姉ェ言葉も消えていた。かなり本気で怒っていたに違いない。
社に戻るまでの間、普段他人をうんざりさせるようなことをまるで空白の時間を少しでも埋めるかのごとく陳列しまくる番田部長は、さすがに何も話さなかった。その代わり深く長いため息を約三〇秒おきにつき続けた。その息を聞くたびに、輝彦は心が締め付けられる思いがした。
(続く)
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