(二)-9

 翌朝、輝彦は朝の通勤電車に乗っていた。満席のロングシートの前に立ちつり革に捕まりながら、スマートフォンでニュースサイトを見ていた。

 すると電車が揺れるたびに背中にゴツゴツ何かが当たる感触がした。後ろを振り向くと、後ろの若そうな男性がスポーツブランドのロゴが大きくあしらわれたドラムバッグのような背負いのバッグを背中に乗せていた。

 2、30センチはあろうかというその奥行きのおかげで、多少の揺れでもそれが俺の方に移動して背中を押すのだ。背負っている方は、バッグの感触は背中のみにしか感じない。バッグが俺に当たっているということに気づかない。そうして夢中に手元のスマホをいじっているのだ。周囲への配慮のなさにイラつかずにはいられなかった。


(続く)

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