たくさんのもの

筑紫榛名@12/1文学フリマ東京え-36

(一)

「香川! 香川! 香川輝彦はどこへ行った」

 オフィスのデスクで受話器を片手に持って怒鳴る番田栄治部長に、香川輝彦は名前を呼ばれた。

 輝彦はちょうど自分のデスクで電話に出ているときで、返事ができなかった。

 部長は輝彦の方を見て、電話をしているのを見るとさらに怒鳴った。

「おい香川! 電話している場合か! すぐにこっちへこい!」

 輝彦は「あのすみません、今部長に呼ばれたので、一度切りますね。すぐに折り返しますので」と受話器に聞かせるとそれを電話器の受け皿に戻した。そして立ち上がると部長のデスクへ向かった。


(続く)

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