(四)

 夕食の後、輝彦は外へ出てビーチに向かった。コテージから海はすぐ近くだった。部屋の先に林があったので、窓越しには見えなかったものの、直線距離で五分程歩いたところにビーチがあった。

 平日だったのでビーチには観光客もいなかった。

 輝彦は浜辺に寝っ転がった。空にはたくさんの星がきらめいていた。東京でみる夜空とは違った。東京では数えられる程度しか見られない星たちが、ここでは大小様々に、それこそ無数に空にひしめいていた。

 輝彦は手を伸ばしてみた。当たり前だがつかめるわけではない。でもそんなにたくさんあるなら、一つくらい、手のひらの中に入ってきても良さそうなものだ。しかし手のひらを顔の方に向けてもそこには手のひらしか見つけられなかった。

 ゆっくりとした波の音が静かに聞こえた。それ以外の音は聞こえなかった。しかも満天の星空を含む大自然の中に溶け込み、音のようには感じられなかった。


(続く)

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