(三)-2
さらに小声で「うざい」「きもい」と誰かがぶつぶつ呟く声が聞こえた。隣を見ると、ボブカットの内側に赤に近い紫の色が見える女性が立っていた。
輝彦は思わず口から出るほどの舌打ちをした。案の定、電車の揺れでぶつかる体になんども肘打ちをしてきた。輝彦は、今日は徹底的に対抗してやる気になり、肘打ちを返した。
「ちょっと何すんのよ!」
女性が俺の方を向いてそう言ってきた。
「なんだと! 肘打ちしてきたのはお前の方だろ!」
(続く)
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