第1話 VTuberとVRchat


「ただいま〜……。」


 今日もまた、フラフラとした足取りで帰宅する。

 時刻は午後8時を回ったところ。激務を終えた俺の身体は、癒しを求めていた。


「あ〜……配信まであと1時間くらいか……。」


 そんな社畜である俺の癒しは二つ。

 一つは動画視聴。特に最近はVtuberにどハマりしている。面白いのはもちろん、声を聴くだけで、一日の疲れが吹き飛んでいくようだ。

 そして二つ目は、vrchat。俺がVtuberに興味を持ち始めたきっかけでもあるゲーム。

 仕事から帰って今日の愚痴をみんなに話す。 

 社会人になってから友人と遊ぶ機会がめっきりと減った俺にとって、ここは唯一の遊び場だ。


 「とりあえず風呂入って飯食うか。」


 俺は歳に似合わない声を上げながら重い腰を上げ、風呂に入る。

最近、風呂の中でもスマホを触ってしまうようになった。いい加減気を付けようと思うのだが、いかんせん風呂で眠ってしまいそうになる。それだけは避けたいところだ。


 「もうちょいかな。」


 時計を見て、俺はぼそりと呟く。

 ちなみに最近は、椚 紫苑というVtuderにハマっている。見た目とのギャップが良い。

 うまく説明出来ないが、何というか……ね。うん。

 余談だが、俺はロリコンじゃない。小柄なアバターだから好きとか、そんな理由じゃあない。

 と、心の中で誰かに弁明しながら、パソコンで椚 紫苑のチャンネルを開いて待機する。


「そういえば、今日はコラボって言ってたっけ。」


 今日の朝、Twitterに投稿された予告で、コラボするよ! と書かれていた。

 俺はコラボ相手を確認すべく、動画のサムネを開く。

 まぁ、確認せずとも大体予想はつくのだが。

 

「今日のコラボは……やっぱり凛か。」


 河津桜 凛、個人勢のVtuberではぶっちぎりの登録者数を誇る配信者。

 俺も存在自体は知ってはいたが、紫苑ちゃんとコラボする以外で見たことはない。

 

「個人勢でここまで登録者数伸ばせるのはすごいな。」


 現在の凛の登録者数は300万人、紫苑の登録者数は310万人だ。

 この二人がコラボするのだから、配信は毎回何万人と集まってくる。

 

 俺はそのまま配信を眺めながら、お酒を嗜んだ。

 それから、そろそろ日付が変わろうかという時間になり、だいぶ酔いが回ってきたころ、二人の会話から気になる単語が耳に入ってきた。


「で、今はVRchatってゲームが注目されているらしいですよ。」


俺の2つ目の趣味であるVRchatが、二人の会話から聞こえてきた。

 結局、Vtuberがプレイするには難しいということでスルーされてしまったが……。


「ま、確かにVtuberは出来ないな。」


 俺はグーッと伸びながら呟く。

 時刻は23時40分。俺は明日の仕事の事を憂鬱に思いながらベッドに入る。

 

 VRchatにVtuberね……有りだと思うんだけどな~。

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