第9話 インフルエンサーは大変だ。
「……あ~頭痛い。絶対に昨日飲みすぎた……。」
凛はズキズキと痛む頭を抑えながら、洗面台に向かう。
「今日は何しよっかな~。」
歯を磨きながら今日は何をして過ごすか考えていた。
今日も配信をしてもいいが、二日酔いでそんな気が起きない。とりあえずうがいをして、リビングに戻る。
ソファに座ってスマホの電源をつける。
「なんか面白い商品ないかな。」
通販サイトを開こうとしたところ、つい癖でTwitterのアイコンを押してしまった。
ツイ廃ではあるあるの光景である。
「またやっちゃった。まあどうせ開いたし、おはようツイートでもあげようかな。」
と、ここで紫苑からDMが来ていることに気付いた。
普段はTwitterの通知をきっているので、開いてみないと分からないのだが……ツイ廃ならノープロだ。
凛はとりあえず、紫苑から届いたDMを開いてみた。
『凛さん大変です!』
とこれだけ。凛は紫苑が何かヤバイことに巻き込まれているのではないのかと急いで返信した。
すると直ぐに既読がついて、またしても焦りが明白なメッセージが来た。
凛:どうしたの?!大丈夫?!
紫苑:いえ、私は大丈夫ですけど、凛さんは大丈夫なんですか?
凛は首を傾げる。紫苑に何か心配させるようなことでもしたんだろうか。
凛は配信切れ忘れたとか、住所バレしたのか、とか色々考えたが、全く検討がつかない。
凛:ごめんね紫苑ちゃん。なんのことかさっぱり分かんないや……。
紫苑:まさかの無自覚! とりあえず凛さん、トレンド開いてみて下さい!!
凛は紫苑に言われるがまま、トレンドを開き、目を疑った。
「な、なな……なんじゃこりゃーーーーーー!!」
Twitterトレンド一位。”#企業Vtuber大量発生”
そう。この原因を作ったのは間違いなく、凛。
凛は急いで紫苑に返信する。
凛:ちょちょ! なんかすごいことになっとる! 私いつの間にか、新時代開いちゃった!!
紫苑:落ち着いて下さい凛さん。確かに新時代ではありますが、落ち着いて下さい!
凛:これ、どうやって収集つければいいの?
紫苑:あ~……頑張ってください!!
凛:逃げるな! 卑怯者ーーー!!
紫苑はこの状況の打開策が見つからず、そのままTwitterをとじた。
一方、凛はとりあえず何かツイートしなければとあたふたしていた。
危ない。おはようツイートなんてしてる場合じゃなかった。
「と、とりあえず話がどこまで大きくなってるか確認しないと……。」
凛は#を押して、何がどこまで進んでいるのか確認することにした。
ざっと確認しただけでも、ネットはお祭り状態。色々な企業がVtuberデビューの報告や、イラストレーターの募集をかけていた。
更に、これに便乗して宣伝しているVtuberも沢山いた。ネットでは、『遂にこのブームがきたか……。』や、『乗るしかない、このビッグウェーブに。』など騒ぎを楽しんでいる人や、『お前ら簡単に乗せられすぎだろ。』みたいな批判の声も上がっていた。
一連のツイートを見た凛は、静かにTwitterをとじた。
「……うん、辞めよう。とりあえずもう少し落ち着いてから何かしらツイートしよう。」
今何かツイートしても、火に油を注ぐだけだと判断し、一旦は様子見することにした。
凛は一回落ち着くために、ベッドにダイブすると、珍しくスマホが鳴った。
ラインとかのメッセージアプリ以外は基本的に通知をオフにしているので、あるとするならそこらだが……。
「え、黒さん!」
メッセージの送り主は、まさかの伊織。実は昨日、ブラウザからVRchatにログインして、伊織とディスコードを交換していた。
どうやらメッセージは、何人かのメンバーでできたグループに送られたらしい。
黒:なんかTwitter、すごいことになってますね……。
真夜中:そうだね、企業Vtuber大量発生ってちょっと面白いね。
黒:俺のところも依頼が殺到してて大変ですよ。
真夜中:あ~そういえば黒さん、Vtuberのアバター制作できたね。
え! 黒さんってVtuberのアバター作ったりしてるんだ……。
何か、自分のことを言われたようで少しドキッとした。
京:そんなに話題になってるんですか?
とりあえず、知らないふりをしておいた。
このまま黒たちと関係を続けていくのなら、いつか自分のことも打ち明けるべきなのかなと、時々思うようになった。
黒:うん。俺の知り合いのイラストレーターの人たちも、依頼が多すぎて、人によっては抽選とか、依頼自体を断っている人が多いんだって。
京:そうなんですね。因みに、理由とかって判明してるんですか?
原因は十中八九判明しているけど、もしかしたら違うかもしれないし! 紫苑ちゃんあたりが原因かもしれないし!!
凛は、最早に0に近い希望を抱いて、伊織に相談した。
黒:河津桜 凛ってVtuber知ってます? どうやら昨日の配信で、企業Vtuberのことについて話したみたいで、このお祭り騒ぎらしいですよ。
京:そうなんですね。イラストレーターの人大変ですね……。
…………どうも、申し訳ありませんでした。
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