第4話 VRchat!ー凛目線ー


VRヘッドセットが届いてはしゃいでいると、あっという間に夜になった。

 凛は今日、VRchatをするかどうか迷っていた。


「本来そのために買ったんだし……最後に一回くらいやってみようかな。」


 時刻は20時を回ったところ。

 凛はプライベート用のPCからVRchatにログインした。

 ヘッドセットから流れる不思議な音楽に耳を傾けながら、凛はホームで一人ぽつんとしていた。


「やっぱりすることないな……。」


 そう思い、VRヘッドセットを外そうとすると、紫苑からディスコードで連絡が来た。


『凛さん、VRchatしてみようと思ったら、ここに行ってみてください。誰かしらがフレンドになってくれるかもですよ!』


 と、ワールドのURLと一緒に送ってきた。

 あの子、エスパーか何かなの? 

 凛は『あざす。今度ラーメン奢る!!!あと、盗聴とかしてる?』と、紫苑に感謝と疑惑を伝えて、URLからワールドに飛ぶ。

 

 ワールドに入った瞬間、聞き慣れた言語が凛の耳に入ってくる。

 このゲームを始めて探し求めていた、愛しの母国語。

 その時点で感動で少し泣きそうになったが、涙をこらえてワールドを進んでいく。

 日本人なら絶対にわかる簡単なクイズを解いて、公民館のような場所に着く。


「おお……日本人だ……。しかも皆アバター可愛い……。」


 凛はまだVRchatを始めたばかりで、アバターのインポートが出来ない。

 だからこそ、可愛いアバターばかり見入ってしまう。


「すご……ペンとかある。これで意思疎通すればいいかな。」


 凛はゲーム内にあるペンを取り、話を聞いてくれそうな人を探す。

 ボイスチャットをすればいいのだが、Vtuber活動のことを考えて一応ミュートにしておく。


「だ、誰かいないのか……。」


 辺りを見渡すが、皆二、三人で固まっていて、なんか入りづらい。

 ちょ、なんで私、ゲームの中でも高校生時代とおんなじことしないといけないの?

 過去の黒歴史を心の奥に押し込んで、もう少し粘る凛。

 が、まだ20時を回ったところなので、人も多くはない。


「……私には、まだ早かったかな、」


 心がポキっといきそうになった凛が、静かにVRchatを切ろうとしたとき、右耳から大きめの声が聞こえてきた。


「あの。」

「!!」


 驚くべき速さで声の方に振り向く凛。

 そこにいたのは、ケモミミを生やした可愛い女の子のアバター。


「もしかして、無言勢初心者の方ですか?」


 優しい声で、凛に質問をする。

 凛は伝わりやすいように大きく頷く。

 無論、この男は伊織である。ネームは水白 黒みずしろ くろ。白に水色のアクセントがかかった髪に立派なケモミミ。身長は143センチで、服の腰の部分には大きな黒いリボンが付けられた可愛いアバター。

 

「無言勢って大変ですよね。特に最初は話しかけるのも億劫になりますよね。」


 深~く頷く凛。さっきまで不安感と絶望感を胸にしていた凛にとっては、これ以上に共感できることはない。

 そんな凛を感じ取って伊織は笑う。

 それにつられて、凛も笑ってしまう。


「京さん、フレンド申請の方法って分かります?」


 首を横にふる凛。さっきまでめちゃくちゃ重いと感じていたヘッドセットだが、今はそんなこと感じている暇がないほどに興奮している。

 ちなみに、凛のネームは八重桜 京やえざくら きょう。理由は適当である。


「なるほど。それじゃあ俺がフレンド申請送るんで、承認方法も教えますね。」


 それから凛は、伊織からVRchatのノウハウを教えてもらい、一気にその魅力に気がついた。

 フレンド申請の方法だけでなく、日本人が多い時間帯や、イベントカレンダーのサイト、アバターの導入方法まで教えてもらった。


「こ、これが……VRchat……。」


 確かに、これは配信では出来ない。この癒やしの空間を仕事で使いたくない!!

 残念ながら、配信で荒らし行為を行う人間も少なくない。ここは秘密にしておこう。


「京さん、アバターミュージアムとか興味あります?」


 伊織の提案に、ミュートした状態で『やった!』と喜びを表す凛。


「それじゃあポータル開くんで、俺に付いて来てください。」


 伊織はそう告げて、アバターミュージアムのポータルを開いて、ワールドに飛ぶ。

 凛はうきうき状態で、伊織の後に続いた。

 

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VRchat、みんなもやってみよう!

ちなみに私はデスクトップ勢です。

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